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高知新聞PLUSの活用法

2022.06.23 00:04

【K+】vol.186(2022年6月23日発行)

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K+ vol.186 
2022年6月23日(木) 発行

CONTENTS
・はじまりエッセイ letter188 中西なちお
・特集 自由な旅へ|一二
・フランスからの土佐人便り BONCOIN IN PARIS✉33
・高知を元気に! うまいもの熱伝 volume.60|ミニトマト@佐川町
・K+インタビュー 話をしてもいいですか vol.188 谷和香菜
・K+ cinema 記憶のなかの映画館⑰
・ちいさいたび #8
・夏葉社 島田 潤一郎|第60回(最終回)|読む時間、向き合う時間
・Sprout Table vol.8 TALI brunch and sweets ●タリ
・なにげない高知の日常 高知百景
・小島喜和 心ふるえる土佐の日々 第三十三回
・+BOOK REVIEW
・Information
・シンディー・ポーの迷宮星占術
・今月のプレゼント

河上展儀=表紙写真

特集
自由な旅へ
一二

仙頭杏美=取材 河上展儀=写真

三嶺を望む街にある山の用品店の、
山でも街でも着られる自由な服作り。

脇から風が入って涼しく着られる新作「フワット」。生地を決定するのに1年かけたそう。「小さなメーカーだからできること」と京子さん

脇から風が入って涼しく着られる新作「フワット」。生地を決定するのに1年かけたそう。「小さなメーカーだからできること」と京子さん



山を愛する夫婦の店

 徳島県三好市と高知県香美市の県境にある、高知県最高峰の三嶺。多くの登山家を引き付けてやまないこの山を望む街に、2018(平成30)年、山の服を扱う小さなメーカーを立ち上げた夫婦が移り住んできました。
 ブランド名は、「一二(じゅうに)」。12カ月暮らしに寄り添う服を、そして、誰でも〝自由〟に着られる服を作りたいという思いを込めます。
 手がけるのは、須崎市出身の高橋康太さんと、愛媛県出身の妻・京子さんです。元々、キャンプや登山が趣味の康太さんと、出会ってから康太さんと共に山に出かけるようになり、その魅力にはまったという京子さん。だんだんと、2人が着たい山の服を作りたいという思いが湧いたのだそうです。
 20(令和2)年には、香美市土佐山田町に、山の道具を扱う「一二の用品店」をオープン。京子さんが腕を振るう食堂も併設されています。1階が店舗で、2階が住居と工房です。「愛犬の九丸と、仕事の時間も一緒に過ごせる環境を探していました。三嶺が近くにあるのも気に入って、この場所に店を開くことにしました」
 三嶺は、ホームマウンテンだという康太さん。好きな山の近くで、愛犬と共に、自分たちが欲しいと思う服を作る毎日です。


モンペズボン。登山用には、速乾性があり、臭いを抑えるナイロン素材、普段使いにはコットンリネンがおすすめ

モンペズボン。登山用には、速乾性があり、臭いを抑えるナイロン素材、普段使いにはコットンリネンがおすすめ



誰もが自由に着られる服

 大学生の頃から、全国で登山や野宿の旅をしてきたという康太さんは、県内で就職するも、山小屋で働きたいと長野県へ。そこで木工を学び、帰郷後は、四万十町で家具製造業に従事します。この頃に2人は結婚し、京子さんは同町で給食の仕事や農家の手伝いを経験します。2人で登山に出かけ、農作業をするようになると、普段着に目が向き始めます。
 「畑での作業も仕事帰りに買い物に行くのも同じ服という生活の中で、どんなシーンでも違和感のない服が欲しくて」と京子さん。「アウトドア用の服は、スポーティーなデザインがこれまで多くて。自分たちが好きなカジュアルな服が欲しいと思いました」と康太さん。
 京子さんの趣味が洋裁だったこともあり、さっそく試作を開始。「独学なので大変でした。作って、着て、直して。それを繰り返し、2年かけて完成しました」。その最初の商品が「モンペズボン」です。昔、日本の作業着だったもんぺの機能を生かしながら、山の服に仕上げました。今は、シャツや帽子などラインアップも増えました。サイズは、どれもワンサイズ。体形を問わず、誰もが自由にいろいろなシーンで着られるデザインを大切にしています。
 人気商品は工場に縫製を依頼していますが、それ以外の商品の縫製や出荷、広報などは全て自分たちで行います。工場から届いた品は、1度洗い、天日で干す一手間を加えます。お客さんにふわりとした状態で着てほしいから。「自分たちの手の届く範囲でできる物作りをしたいと考えています」と2人。



2階の工房の様子。型紙を当てて生地を切り、縫う。現在、縫製は康太さんがメインで行う

2階の工房の様子。型紙を当てて生地を切り、縫う。現在、縫製は康太さんがメインで行う


軽量のテントや、折り畳めるポリプロピレン製のカップなど、持ち運びもセッティングも楽な道具たち

軽量のテントや、折り畳めるポリプロピレン製のカップなど、持ち運びもセッティングも楽な道具たち









プロフィール
高橋康太さん
県内の大学を卒業後、四万十町で家具製造業に従事。その傍ら、山の服を作り始め、2017(平成29)年自身のブランド「一二」を設立。20(令和2)年に香美市に用品店をオープン。須崎市出身。40歳

高橋京子さん
康太さんと結婚し、四万十町では給食の仕事と農家の手伝いなどを経験。現在は、用品店併設の食堂の調理を担当。愛犬の九丸と“3人”での穏やかな暮らしを楽しむ。愛媛県出身。43歳



軽量の荷物で旅に出る

 「山でも畑でも街でも使える服」と、2人の服は境界が曖昧です。「使い方が限られるのが好きじゃなくて」と康太さん。その思いの背景には、軽量の荷物でアウトドアを楽しむ「ウルトラライトハイキング」の考え方があります。康太さんがこの考え方を知ったのは約15年前。例えば、テントがポンチョになるなど、一つの道具が何役もこなすため、軽量化が実現できます。これまで数十㌔もの荷物を背負って登山していたのが一変。「軽いと体の負担も減り、自由度が増しました」
 そんな、軽量な装備を可能にし、テント泊をしながら旅ができる道具一式が、用品店に並びます。店を持つことは、康太さんの念願でした。「高知にはキャンプ好きな人が多いですが、道具が買える店が少なかったので。服も、道具も、実際に手で触れて、気に入った物を買ってもらえたらうれしいです」
 最近、やっと生活に慣れてきたという2人。まとまった休みを取り、愛犬と共に車中泊で旅に出ることもあります。「僕たちは山の服というより、旅の服を作っているのだと思います」と康太さん。旅先という普段と違う場所でも、そこにあるのは日常の連続。その日常のどの場面でも使える服を作り、身に着ける2人。その姿は、軽やかで、自由で、旅の途中のようでもある。
 「先の大きな目標はないですが、自分たちのペースでやりたいことがやれる環境を整えておきたい。何か新しいことを始めたくなったら、すぐ踏み出せる状態でいたいです。今は、九丸と〝3人〟でのんびり暮らしたいですね」



軽量化のコツは、パッキング。同じジャンルの道具を小袋に分けると、リュックのスペースを有効に使えるそう

軽量化のコツは、パッキング。同じジャンルの道具を小袋に分けると、リュックのスペースを有効に使えるそう


山小屋をイメージした店内。内装や、家具のほとんどは康太さんが自ら手がけた

山小屋をイメージした店内。内装や、家具のほとんどは康太さんが自ら手がけた



山小屋のごはんをイメージした食堂のメニュー。「野菜をたっぷり使うようにしています」と京子さん

山小屋のごはんをイメージした食堂のメニュー。「野菜をたっぷり使うようにしています」と京子さん







◎一二の用品店・食堂
香美市土佐山田町2431-30
問/0887-52-8910
P/2台 ※店舗前の駐車禁止
用品店
営/11:30〜16:00
休/月・火 
食堂
営/11:30〜14:30(LO 13:30)
休/月・火・日

商品の購入は店舗または自社HP/https://www.juuuni.com
最新情報は、Instagram/
用品店@juuninoyouhinten 食堂@juuninoshokudou

掲載した内容は発行日現在の情報です。予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。

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