2022.06.21 08:40
線状降水帯予報を備えに 高知県内自治体準備「避難の判断材料」 エリア広く精度には課題
西日本豪雨で崩落した県道(2018年7月6日、安芸市僧津)
浸水した宿毛市中心部(2018年7月8日、同市中央7丁目)
突然の豪雨で車が水没した鏡川河川敷(2019年10月3日、高知市鷹匠町2丁目)
気象庁は西部6市町村に県内初の大雨特別警報を発表。土砂や濁流に巻き込まれ3人が死亡、長岡郡大豊町では高知自動車道の立川橋が崩壊した。
翌19年10月には、高知市の通勤時間をゲリラ豪雨が襲った。南万々や朝倉で冠水が頻発し、鏡川沿いに止めていた車が流された。これも、日本海側の台風に湿った空気が流れ込んで起きたものだ。
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線状降水帯は、積乱雲が次々と線状に連なると発生し、同じ地域に大量の雨を降らせる。高知地方気象台は「夏から秋の発生が多く、梅雨入りした今からが最も警戒すべきシーズン」とする。
海上の水蒸気量が関係しているとされ、気象庁は海上保安庁の船に水蒸気の観測機器を搭載。本年度中には、民間の貨物船やフェリーにも加えて発生に備える。
レーダー網も強化しており、県内では今月2日、気象庁が四国で唯一、室戸市に設置しているレーダーを更新した。雨粒の大きさを正確に測定でき、局地的豪雨を捉える精度が向上したという。
さらに、理化学研究所のスーパーコンピューター「富岳(ふがく)」を活用し、雨雲の動きをより細かく予測するシステムの開発も進む。
気象庁はこれらデータを組み合わせ、積乱雲が生まれやすい条件が整った場合に、線状降水帯の発生を予報する取り組みを1日に始めた。「四国地方」など11ブロック単位で、半日から6時間前に発表する。24年度に都道府県単位、29年度には市町村単位へと範囲を狭めていく方針だ。
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県内では、予報とともに避難指示などを出すことは想定しておらず、「住民の判断材料の一つにしてもらう」として周知を急ぐ。
県は防災アプリを近く改修し、四国地方に予報が出るとプッシュ通知でスマートフォンに知らせる。県危機管理・防災課は「他の警戒情報と合わせ、万一の際はどこに逃げるか、事前の計画に役立ててほしい」とする。
宿毛市も市独自の防災アプリで同様の運用を検討。担当者は「高齢の単身世帯や川に近い住民は、余裕を持って自主避難へとつなげられる」と話した。
現状では予報地域は四国地方と広く、必ず豪雨になるとも限らない。高知市の担当者は「『空振り』もあるだろうが…」としつつ、「住民の自主避難と合わせ、市も職員配備の必要性を考える判断材料になる」とした。(新妻亮太)