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2022.06.18 08:00

小社会 辞世

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 〈さんま、さんま、さんま苦いか塩っぱいか〉。詩人で小説家の佐藤春夫の詩「秋刀魚(さんま)の歌」は多くの人に愛唱されてきた。実は友人、谷崎潤一郎の妻・千代に宛てた恋文である。

 この恋愛は谷崎が妻を佐藤に譲る「細君譲渡事件」として、大いに世間を騒がせた。芸術家はときに突拍子もないことをする。秋刀魚を文学上、不朽の名作に仕立て上げた。

 1964年5月、72歳の佐藤は東京の自邸で放送記者を前にラジオ録音に臨んでいた。その途中、「私の幸福は…」と言いかけて心筋梗塞のため急逝した。長く務めた芥川賞選考委員の座も終わるときはあっけない。

 人が人生の最期に詠んだ詩歌などを「辞世」という。赤瀬川原平さんが監修した「生き方の鑑(かがみ) 辞世のことば」によれば、そのルーツは中国で処刑に臨む際に詠まれた「臨刑詩」とされる。それがわが国に伝わると、ときに美しく、あるいは悲しく、ユーモラスなものなど独自の発展をとげた。

 自分の死を前にして、恐怖心が頭をもたげるのは当然だろう。そこを余裕でかわせる人はやはり人間が大きい。高杉晋作の〈おもしろきこともなき世をおもしろく〉。以前に小欄でも紹介した歌舞伎作者、河竹黙阿弥の〈きょうはいよいよゆくぜ〉などなど。

 一度っきりの人生を生ききったすがすがしさを感じる。佐藤の言いかけた「幸福」の意味は何か。これも意図せぬ余韻が漂い、興味は尽きない。


6月18日のこよみ。
旧暦の5月20日に当たります。みずのえ とら 六白 赤口。
日の出は4時56分、日の入りは19時18分。
月の出は23時06分、月の入りは8時40分、月齢は18.6です。
潮は中潮で、干潮は高知港標準で2時32分、潮位102センチと、15時00分、潮位11センチです。
満潮は7時57分、潮位180センチと、21時59分、潮位173センチです。

6月19日のこよみ。
旧暦の5月21日に当たります。みずのと う 七赤 先勝。
日の出は4時56分、日の入りは19時19分。
月の出は23時42分、月の入りは9時51分、月齢は19.6です。
潮は中潮で、干潮は高知港標準で3時27分、潮位102センチと、15時51分、潮位28センチです。
満潮は8時52分、潮位169センチと、22時49分、潮位167センチです。

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