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2022.06.12 05:00

【出生数最少に】踏み込んだ対策が必要だ

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 2021年に国内で生まれた赤ちゃんの数が過去最少となった。出生数の減少ペースが加速している。少子化は、社会経済活動の根幹を揺るがしかねない問題であり、もう一段踏み込んだ姿勢で臨むべきだ。
 厚生労働省の人口動態統計(概数)によると、21年の出生数は81万1604人で前年から3万人近く減少した。女性1人が生涯に産む子どもの推定数を示す合計特殊出生率は1・30で6年連続で下がった。
 高知県では出生数が8人増の4090人、合計特殊出生率は微増の1・45とやや改善したが、厳しい構造であることに変わりはない。
 国立社会保障・人口問題研究所が17年に公表した推計では、出生数が81万人前半まで減るのは27年としていた。推計より6年ほど早く少子化が進み、80万人割れが目前だ。深刻さは増す一方と言える。
 少子化の原因はこれまで、若者の経済基盤の弱さ、子育て支援策の不十分さ、価値観の多様化に伴う未婚化、晩婚化の流れなどが指摘されてきた。そこに新型コロナウイルス禍が加わった。民間会社の調査では、回答者の約2割が妊娠・出産に影響があったとする。婚姻件数も約2万5千組減り、戦後最少の約50万組になったことが今後に影を落とす。
 子どもが減り続ければ、経済は縮み、各産業の担い手に支障も生じる。年金、保険料など社会保障制度の持続可能性も危うくなる。政府は民間を巻き込みながら、政策の総動員を図るべきだ。
 これまでの少子化対策は、古くは保育所整備を柱とした1994年の「エンゼルプラン」があり、総合的な指針となる2004年の「少子化社会対策大綱」策定があった。近年では、安倍政権が幼児教育・保育の無償化を始め、菅政権は不妊治療の保険適用や、男性の育児休業の取得を進めた。
 それらは機能した部分もあっただろうが、現状を見れば、成果は不十分だったと言わざるを得ない。何がネックで、何が必要なのか、取り組みを見直す必要がある。
 政策誘導で少子化を改善できることは北欧諸国やフランスなどが実証する。多様な保育サービス、手厚い手当、仕事と子育ての両立支援策などで、人口が維持される水準付近まで出生率を回復させている。
 これらの国の多くでは、国内総生産(GDP)に対する子育て関連支出が3%台なのに対し、日本のそれは18年度で1・4%にとどまる。成果が出ない一因は、投じる財源の少なさにあるとも言える。
 岸田政権は、子ども関連政策の司令塔として来春、こども家庭庁を新設し、少子化対策もてこ入れする方針だ。子育て予算の「倍増」を打ち出すが、具体的な道筋は示せていない。さまざまな分野の財政需要が増える中、本気度が問われよう。
 欧米では、子育て前後の仕事の継続が容易なことや、男性の家事参加率が高いことなどが出生率にも結びついているとされる。こうした環境づくりも進めなければならない。

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