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2022.06.10 08:00

【若者の自立支援】「負の連鎖」断ち切ろう

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 児童養護施設や里親家庭で育つ若者の自立支援に関し、原則18歳(最長22歳)までとなっている年齢上限が撤廃されることになった。今国会で改正児童福祉法が成立し、2024年度から施行される。
 自立の準備が不十分なまま社会的養護の仕組みから離れた若者は、困窮や孤立に陥りやすく、18歳で自立支援を打ち切る現行制度は「18歳の壁」と呼ばれていた。家庭環境に起因する親から子への「負の連鎖」を断ち切るためにも、この見直しを有効に生かしていきたい。
 親の死や病気、虐待などの理由により児童養護施設や里親の下で暮らす若者は約4万2千人(21年3月時点)おり、大半は高校卒業を迎えると退所する。退所者は「ケアリーバー」と呼ばれ、厚生労働省が昨年行った実態調査では、3人に1人が生活費や学費の悩みを抱えていたことが判明。困窮で医療機関を受診できなかった人も目立っていた。
 今回の上限撤廃により、個々の若者の実情に合わせて、切れ目のない支援ができるようになる。18歳以上の先輩が施設にいれば、後輩の入所者らも進学や就職を具体的にイメージしやすくなるだろう。
 ただ、現行制度にも22歳まで在籍を延長できる仕組みはある。それが積極的に利用されてこなかったのは、施設に定員がある中、一人が長くいると新しい人が入れないことが背景とされる。人員、施設の両面で態勢を拡充していく必要がある。
 施設によって支援の濃淡があることも想定される。現状でも、施設ごとに運営態勢の違いが指摘されている。子どもは施設を選べない。どの施設でも同じ支援が受けられるよう環境を整えなければならない。
 退所したケアリーバーも相談できる拠点の設置も盛り込まれた。具体化する姿勢が問われる。
 今回の児童福祉法の改正では、虐待を受けた子どもを親から引き離す一時保護の要否を、裁判官が判断する制度も導入された。
 親権者が保護に同意しない場合、児童相談所(児相)が保護開始前から7日以内に裁判所に「一時保護状」を請求する。認められれば、保護の透明性や妥当性が担保されることになる。
 子どもの安全を追求していく姿勢に異論はない。ただ、裁判官がどれだけの証拠で認めるのか、基準作りは難しい作業になるとみられ、それら詳細を決めるのはこれからだ。制度開始に伴い児相の負担が増えるとの見方もある。
 法改正ではほかに、虐待対応や家庭支援に高い専門性を持つ新しい認定資格の創設、わいせつ行為をした保育士が再登録する場合の規則の厳格化なども盛り込まれた。
 全国の児相が対応した虐待件数が20年度は初めて20万件を超えるなど、児童福祉分野の取り組みは重要性を増している。状況に応じて法や制度を見直すことは当然だ。見直しの趣旨に沿った成果を上げていくためには、運用面の課題もしっかり解消していかなければならない。

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