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2022.06.08 08:00

【「桜」夕食会】説明責任を軽んじるな

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 安倍晋三元首相の後援会が主催した「桜を見る会」前日の夕食会の費用補塡(ほてん)問題を巡り、違法献金の可能性が指摘される事案が新たに浮上した。どのような経緯で行われるようになったのか。安倍氏の説明が求められる。
 2017~19年の3年間に、サントリーホールディングスが計約45万円分の酒類を夕食会に無償提供していたことが分かった。同社は提供自体は16年もあったとしている。企業献金の在り方が問われる状況だ。
 この問題では、1人5千円の参加費では会場となるホテル側への支払いが賄えず、後援会の穴埋め分を政治資金収支報告書に記載しない不正な処理が長年続けられていた。飲食代を抑えようとしたことが、この酒類提供につながったのではないかと推察される。
 ホテル側との交渉を担当した秘書は、安倍氏側が負担すれば地元有権者に対する寄付に該当して、公職選挙法に違反する恐れがあると認識していたと、東京地検特捜部に供述している。収支報告書への穴埋め分未記載もそうした発想からの行為ではないかと思えてくる。
 安倍氏は補塡を一貫して否定し続けてきた。刑事処分で不起訴となった後はそれまでの説明を一転し、事実を知らなかったと繰り返した。
 この間の国会での「虚偽答弁」は118回に上る。国会答弁が事実に反していたことは認めて謝罪した。しかし、国会軽視の姿勢を続けてきた責任は重い。
 何より、この問題への疑念が晴れたわけではない。「政治とカネ」問題の根深さは、有罪判決や閣僚辞任などが見せつける。収支報告書などを通した政治活動への国民の監視と批判を避けるような行為が許されてはならない。疑念が向けられた際には十分な説明が不可欠だ。
 この問題を巡り、ホテル側から明細書を取り寄せて開示すれば判明することがあったが、安倍氏はそれさえ拒んできた。こうした対応が政治への信頼をゆがめることになる。国民への説明を通して理解を進めることで、政治不信解消への歩みを着実なものとすることが必要だ。
 安倍氏は捜査当局から任意の聴取を受けた。首相経験者に疑念が向けられたことを重く受け止めなければならない。刑事司法における解明は限界が示されたが、政治責任や道義的責任まで曖昧にはできない。
 森友、加計学園も国会での解明が不十分で、疑念がくすぶり続けている。「負の遺産」を、続く政権が引き継ぐ形でそれへの対応が求められるのは残念だが、放置するのもまた許されることではない。
 岸田文雄首相はサントリーの酒類提供への認識を問われ、「関係者が説明責任を果たすべきものだ」と述べている。こうした発言は往々にして、自身の関与を否定するためのものになりがちだ。
 問題を曖昧にしないために、関係者が説明責任を果たすための環境づくりにどう取り組むつもりなのか。首相の姿勢も問われている。

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