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2022.06.07 08:00

【核禁条約会議】参加へ再考を求める

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 核兵器を非人道兵器として全面的に禁じる「核兵器禁止条約」の第1回締約国会議が21~23日、オーストリアのウィーンで開かれる。政府はオブザーバー参加を見送る見通しの一方、学生団体を「ユース非核特使」に任命した。前日の「核兵器の非人道性に関する国際会議」には被爆者を含む代表団を派遣する。
 ウクライナ危機や東アジアの安全保障環境が悪化する中、米国の意向をにらみつつ、核廃絶を求める国内世論とバランスを取ったのだろう。だが、どっちつかずの印象は拭えない。米国の核抑止力に頼る状況にあるとしても、将来的に核廃絶を目指す姿勢は国際社会にはっきりと示すべきだ。再考を強く求める。
 核禁条約は、核保有国に特権を認めた核拡散防止条約(NPT)体制下で核軍縮が停滞した反動から実現したといってよい。非保有国が主導する形で2017年に採択され、昨年1月に発効した。これまでに61カ国が批准している。
 ロシアのウクライナ侵攻でNPTが実質的な機能不全に陥る中、締約国会議は核軍縮を議論する舞台として、より重要性が高まっている。ただ、核保有国と非保有国の対立は尾を引いたままだ。米英仏中ロの核保有五大国は核兵器を違法化する条約に強く反対し、米国の「核の傘」の下にある日本なども参加しない。
 そうした構図の中で、どう具体的な成果を導き出すか。最初の締約国会議から、難しい課題を背負った格好だ。開催国のオーストリアが締約国会議とは別に非人道性会議を開くのも、保有国にも広く参加を呼び掛けるための苦肉の策だろう。
 核軍縮を巡る国際的な議論で、唯一の戦争被爆国である日本に求められているのは、核保有国と非保有国の「橋渡し役」にほかなるまい。学生特使らの参加は、国民が核廃絶を求めているメッセージとなろう。だが、国としての姿勢は、国際社会の目にどう映るのか。
 核軍縮を「ライフワーク」と位置付けているとされる岸田文雄首相は、各国の政治指導者らによる「国際賢人会議」の年内創設を表明。来年の先進7カ国首脳会議(G7サミット)の広島開催も決まった。
 そうだとしても、核軍縮の主要会合に背を向け、姿勢を明確にしない日本政府を、非保有国が橋渡し役として信頼できるだろうか。核廃絶を目指す理念が疑われれば、被爆国の説得力さえ失いかねない。
 日本と同じく、米国の「核の傘」に依存する北大西洋条約機構(NATO)のドイツやノルウェー、加盟申請中のフィンランド、スウェーデンもオブザーバー参加する。ドイツが指摘する通り、現状の核抑止政策と核廃絶という長期目標は、直ちに矛盾するものではあるまい。
 ロシアが核兵器使用をちらつかせ、北朝鮮にも核実験の兆候がみられる。国際社会の緊張が高まる中、ともすれば核廃絶への潮流が弱まりかねない。だからこそ、核兵器の非人道性を知る被爆国として、その責任を果たす姿勢が求められる。

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