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2022.06.05 08:00

【相次ぐ値上げ】重い食料安定供給の課題

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 穀物や原油の価格が上昇し、円安の進行もあって食品の値上げが本格化してきた。日本は食料輸入への依存度が高く、輸入先の多角化や食料自給率の向上が求められる。食料安定供給へ向けた取り組みの重要性が増している。
 新型コロナウイルスの感染拡大やロシアによるウクライナ侵攻は、物流の混乱や生産の停滞を招き、経済社会活動に大きな影響を与えてきた。食料安全保障への意識も高まる。2021年度版の「農業白書(食料・農業・農村の動向)」でもこうした問題に言及し、対処が急務と訴えている。
 例えば小麦は国内消費の9割を輸入に依存する。ほぼ全てが米国、カナダ、オーストラリア産になる。ロシアやウクライナは世界の輸出に占めるシェアが約3割になるが、この地域からの輸入はない。
 しかし、侵攻による供給不安から国際相場が急騰して、その影響を受けている。政府が製粉会社に売り渡す価格はことし4月期は前期比で2割近く上昇した。この主因は北米産地の不作とされ、侵攻の影響が価格に本格的に反映されるのは10月期からと見られている。一段の上昇は避けられそうにない。
 食用油も原料価格が上がり、原油高に伴う包装資材や輸送費の上昇ものしかかる。食品各社は吸収しきれなくなり、値上げ発表が相次いで家計への負担感が増している。
 帝国データバンクのまとめでは、食品主要105社が年内に実施したか予定する値上げは1万品目を超える。平均の値上げ幅は1割を上回る。夏をピークに、秋以降の再値上げが想定される状況という。価格改定の動きは長期化しそうだ。
 日本の農産物輸入額は7兆円強あり、米国、中国など上位6カ国が6割程度で推移している。品目別では上位2カ国で8~9割を占める作物もある。一部は輸入先の多角化が進みつつあるが、米国をはじめとした少数の特定国への依存度が高い。
 農業白書はこうした特徴を挙げながら、輸入の安定化や多角化の必要性を取り上げるとともに、国内の農業生産増大への取り組みを訴える。物価上昇は日本の世界とつながる現状とリスクを映し出している。それらと真剣に向き合い、浮かび上がった懸念を軽減する必要がある。
 食料自給率は供給熱量ベースで20年度は37%にとどまる。農業は担い手不足の一方で、経営開始時の課題から定着できない新規就農者もいる。簡単に解消はできないが、多面的な対応を重ねるしかない。
 農林水産物・食品の輸出額が初めて1兆円を超えた。日本の生産額に占める輸出額の割合は他国と比べて低いだけに、さらに伸ばせる潜在力はある。政府は30年に5兆円の目標を掲げる。輸出の増大が生産基盤を強化し、ひいては自給率の向上に貢献することも期待できる。
 支援体制の強化は不可欠だ。生産や流通の効率化を進めながら、安定供給を確保するために地産地消を含め対策を充実させたい。

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