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2022.06.04 08:00

【島根原発の同意】再稼働への不安は残る

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 東京電力福島第1原発事故から約11年3カ月。原子力の安全性やエネルギー政策への疑問が募る中、国内の原発がまた一つ、再稼働に向け動き出した。
 島根県の丸山達也知事が中国電力島根原発2号機(松江市)の再稼働に「同意」を表明した。
 これで関係自治体の地元同意手続きが完了。中国電は安全対策工事を終えれば、2023年度にも再稼働させたい考えだ。
 ただ、同意は地元の懸念が払拭されたことを意味するわけではない。避難計画の実効性など多くの課題が残されている。
 住民の不安を置き去りにしたまま、再稼働の手続きだけが進むことがあってはならない。中国電や政府はそれを肝に銘じ、引き続き安心安全を追求しなければならない。
 島根原発2号機は、過酷事故を起こした福島第1原発と同じ「沸騰水型」と呼ばれる原子炉である。全国で唯一、県庁所在地にある原発としても知られる。
 沸騰水型は構造上、被ばく対策が必要な設備が多く、新規制基準によって大規模な設備改修も余儀なくされている。そのため福島の事故後、実際に再稼働した沸騰水型の原発はまだない。
 住民は重大な事故が起きた時の避難にも大きな不安を抱く。島根原発は避難計画の策定が必要な30キロ圏内に島根、鳥取両県の6市が入り、計約46万人もが暮らしている。
 高齢化が進む地域では、自力で避難するのが難しい人も少なくない。地震や津波が起きれば、避難路が被災する恐れもある。本当に安全に速やかに避難できるのか。住民の不安は当然だ。
 しかも、そこまで備えても事故や被害を防げるかどうか分からないのが原発だ。安価で安心して使い続けられるエネルギーとは言い難い。
 再稼働に同意を表明した丸山知事も島根県議会で「不安や心配のない生活を実現するためには、原発はない方がよく、なくしていくべきだと考えている」と述べた。
 現状では、太陽光や水力などの再生可能エネルギーだけでは電力需要は賄えない。エネルギー価格も高騰している。同意は「苦渋の選択」とした。政府のエネルギー政策に疑問を呈したともいえよう。
 政府はエネルギー基本計画で、福島第1原発事故を教訓に、再生可能エネルギーを主力電源化する方針を掲げている。
 同時に原子力も持続的に利用し、30年度の原発の電源構成比率目標は「20~22%程度」とする。岸田文雄首相も「最大限活用」する考えを示している。
 目標達成にはかなりの数の原発を再稼働する必要があり、原発回帰と取られても仕方があるまい。もっとも、原発はもはや、再稼働をそこまで拡大できるほど国民から支持されてはいないだろう。
 再生可能エネルギー拡充に一層力を入れ、原子力依存を早期に解消する。政府にはそれを改めて求める。

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