2024年 05月05日(日)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

2022.05.30 05:00

【来年のサミット】広島から核危機止めたい

SHARE

 先進7カ国首脳会議(G7サミット)が来年、広島市で開かれることになった。初の戦争被爆地での開催となる。
 世界ではいま、核兵器を巡り緊張が高まっている。隣国ウクライナに侵攻し、核の使用もちらつかせるロシア。核・ミサイル開発を続ける北朝鮮。台湾への軍事的圧力を強める中国も核保有国である。
 核は核で制す核抑止の抵抗感も薄れていけば、緊張がさらに高まりかねない。そうした中、西側の核保有国を含むリーダーが、唯一の被爆国の被爆地に集う方針が決まった意義は大きい。
 開催は来年だが、核の危機が簡単に解消するとは思えない。G7が外交力と知恵を結集し、危うい流れを止める場にしたい。
 広島開催の方針は岸田文雄首相が先の日米首脳会談で示し、バイデン米大統領も支持した。広島は岸田氏の地元だが、G7のうち米国、英国、フランスの3カ国が核保有国ということもあり、当初は有力な候補地ではなかった。
 ところが、2月にロシアがウクライナに侵攻。核の脅威を訴え、平和を呼び掛けるには広島ほど「ふさわしい場所はない」(岸田氏)と判断した。
 岸田氏は記者会見で「G7首脳と共に平和のモニュメントの前で、平和と世界秩序と価値観を守るために結束すると確認したい」と述べた。そうなるよう期待する。
 ただ、日本政府や国会議員の姿勢は気になる。
 日本は核を「持たず、つくらず、持ち込ませず」の非核三原則を国是としてきた。国連総会にも毎年、核のない世界を目指す決議案を提出している。
 その一方で、昨年発効した核の使用や開発、実験を禁止する核兵器禁止条約には、核保有国とともに加わっていない。米国の「核の傘」によって自国の安全保障を実現しようとしているからだ。
 ウクライナ侵攻では、安倍晋三元首相らが、米国の核兵器を日本に配備して共同運用する「核共有」の論議も提起した。岸田氏は核共有を否定したが、元首相の発言は重い。日本の姿勢が疑われ、他の非核保有国からの信頼も失いかねない。
 国際秩序をゆがめようとする覇権主義的な国々は確かに脅威である。ロシアの行動は、北欧の中立国フィンランドやスウェーデンに北大西洋条約機構(NATO)への加盟を決断させた。東アジアでは中国の台湾侵攻も危惧される。
 だからといって民主主義陣営も核保有や「核の傘」への依存を続ければ、核による破局の恐怖はいつまでもなくならない。G7首脳は広島で核の恐ろしさと、廃絶の必要性を再確認する必要がある。
 被爆地でサミットを開催する以上、成果が問われる。核保有国を含む先進国がどんな方策を模索し、どんなメッセージを発信できるか。議長国日本の確固たる姿勢とリーダーシップも欠かせない。

高知のニュース 社説

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月