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2022.05.24 08:00

【日米首脳会談】地域安定につなげてこそ

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 インド太平洋への米政権の揺るぎない関与を打ち出すとともに、中国や北朝鮮をにらんで日米同盟を強化する。初来日したバイデン米大統領と岸田文雄首相との会談は、こうした姿勢を明確にした。
 ウクライナに侵攻したロシアへの対処で連携するとともに、東アジアでの力による現状変更を許さない意思を確認した。覇権主義的な動きを強める中国や、核・ミサイル開発を進める北朝鮮を念頭に抑止力、対処力の強化を図る。
 東アジアの安全保障環境が厳しくなる中、同盟の在り方が模索される。昨年春の日米首脳会談では、日本側は防衛力強化の「決意」を表明した。政府は、外交・安全保障の長期指針「国家安全保障戦略」などの改定を年末に予定している。
 首相は今会談で、防衛費の相当な増額を確保する決意を伝えた。また、反撃能力を含めあらゆる選択肢を排除しない考えを示した。安保環境が危機感をあおる。ロシアの侵攻は防衛力を強化する必要性を意識させたことは間違いない。
 だが、日米同盟の一体化は中国側を刺激し、日本を軍事的衝突に巻き込みかねない。バイデン氏は、中国が台湾を攻撃した場合は防衛に関与すると明言した。この発言に中国は強く反発している。
 日本防衛に米国の核兵器と通常戦力で関与する「拡大抑止」の強化へ協議することでも一致した。その有効性にとどまらず核軍縮の取り組みを後退させかねないだけに慎重な検討が必要だ。
 日本の防衛能力向上へ向けた要求はさらに強まる可能性がある。必要な装備は充実させるにしても、無制限に積み上げるようでは軍拡競争につながりかねない。財政圧迫の懸念も強まる。
 何より、憲法の専守防衛の理念と整合性が保たれるのかは重要な論点だ。なし崩しは認められない。国内の議論が進まない状況で前のめりの対応に陥るようでは危うい。
 首相は、自由で開かれたインド太平洋の実現と、自由で開かれたルールに基づく国際秩序の構築に意欲を示した。それ自体に異論はない。
 しかしながら、同盟の強化だけでは十分ではないことは明らかだ。対北朝鮮では日米韓は緊密な連携が求められる。それだけに、いかに日韓関係を改善するのかも問われる。複合的な取り組みが必要となる。
 バイデン政権が提唱する新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」が発足した。通商分野での影響力拡大を狙う中国を意識し、環太平洋連携協定(TPP)の脱退で揺らいだアジアでの存在感回復を狙う。首相は参加を表明した。
 米中は東南アジア諸国の取り込みを激しく競っている。中国は昨年、東南アジア諸国連合(ASEAN)との関係を格上げした。米国も格上げする方向で関与を加速させる。
 米中対立の激化は、半導体生産などを含めた日本の経済安全保障分野にも影響している。摩擦を緩和する知恵もまた必要になる。

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