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2022.05.18 08:00

【地銀の業績改善】相談、提案能力が重要だ

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 地域経済を支える地方銀行の経営状況が良好であることは、地元の中小企業や住民に心強い話だ。だが、その経営基盤が安定的なものか、見極める必要もある。
 東京証券取引所などに上場する地方銀行・グループ77社の2022年3月期決算が出そろった。四国銀行、高知銀行を含めて、全体の8割超に当たる65社の純利益が前期から増え、業績の改善傾向が見られた。
 地銀を取り巻く環境は厳しさを増している。日銀が続ける超低金利政策により、本業の融資で利ざやが縮小し、人口減少で市場も縮んでいる。その中での増益は、資金運用や経費圧縮など各行が経営努力をした結果だろう。
 だが、増益は、新型コロナウイルス禍に対応した政府の資金繰り支援によるところが大きい。
 政府はコロナ禍で売り上げが落ち込んだ企業を対象に、実質無利子・無担保の融資制度を導入した。金融機関は小さいリスクで貸出金を増やすことができ、倒産が出づらくなったことで、貸し倒れに備える与信関係費用の負担が減った。
 業績悪化の要因になりかねなかったコロナ禍が、短期的には追い風になったという一面がある。
 その無利子・無担保のコロナ融資は、今春から返済が本格化した。コロナ感染が長引く中、売り上げが戻らず、返済に耐えられなくなる取引先が出てくることも想像できる。
 懸念は他にもある。ロシアのウクライナ侵攻や円安に伴う資源、物価の高騰が企業や家計に負担を与え、地域経済への影響が見込まれる。各行は低金利による利息収入減を補うため、金利が高い外国債での運用を増やしているが、米の金利上昇で債券価格が下がり含み損も生じる。
 地銀を取り巻く環境の厳しさは、これまで以上だとも言えるだろう。
 政府は近年、人口減少やオーバーバンキング(金融機関が過剰な状況)を踏まえ、地銀の再編を促してきた。統合、合併に踏み切る際に支援する「資金交付制度」を導入。同一地域内の合併で寡占状態となっても独占禁止法を適用しない特例法を施行した。日銀は、統合や合併を決めた地銀への優遇措置も始めた。
 それらにどう対応するかは各行が主体的に判断するほかないが、組織の在り方を問わず、これから地銀に欠かせないのが、地域の資金需要に応えること以上の役割だ。
 大手銀と異なり、地銀は地域や取引先の情報を蓄積し、独自のネットワークも持つ。コロナ禍で困窮する取引先などに経営改善や新規事業など有効な戦略を提案でき、事業承継やM&A(合併・買収)などの支援もやりやすい。
 政府も銀行の地域貢献を念頭に、業務範囲の規制緩和を進め、人材派遣業などもできるようになった。
 多くの地銀は既にこうした事業を重点化する。コンサルティング、提案能力を通じて取引先の成長に貢献し、それにより地域経済が底上げされ、自らの経営基盤も強くなる。そのような好循環を目指したい。

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