2022.05.10 08:00
【韓国新大統領】日韓の関係改善急ぎたい
既に尹氏も日本の岸田文雄首相も関係改善に強い意欲を示している。着実かつ速やかに進めたい。
数年来、日韓関係は「戦後最悪」といわれてきた。歴史問題に端を発した関係悪化が、経済や安全保障にも広がったからだ。
2015年、日本の安倍晋三政権と韓国の朴槿恵(パククネ)政権は元従軍慰安婦問題の解決に向け、いわゆる「日韓合意」を結んだ。日韓の懸案は大きく前進すると思われた。
ところがその後、韓国で政権交代があり、大統領に就任した文在寅(ムンジェイン)氏が日韓合意を事実上、白紙化。日本政府が解決済みとしてきた元徴用工を巡る訴訟も韓国であり、日本は反発を強めた。
対立はさらに、日本による韓国への輸出管理強化、韓国による日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄通告などにも発展。関係は一気に冷え込み、打開策も見いだせないまま、いまに至っている。
この間の韓国の対応は問題が多い。政権交代があったとしても政府間の合意をほごにしては信頼関係は築けない。ただ、対立を先鋭化させた一因は日本側にもなかっただろうか。輸出管理強化は韓国側に報復と捉えられた。
東アジアの安全保障や世界経済の安定にとって日韓の連携が重要であるのは言うまでもない。最近の国際情勢を見れば、なおさらだ。
コロナ禍に続いてロシアのウクライナ侵攻で経済が混乱している。中国やロシアの軍事的脅威も再認識されるようになった。北朝鮮は核・ミサイル開発を進めている。日韓はいがみ合っている場合ではない。
尹氏は、15年の日韓合意は政府間の「公式合意だ」と発言している。就任を前に政策協議代表団も日本に派遣してきた。関係改善を図りたいという姿勢と見てよい。
日本政府も未来志向に立ち、これに向き合う必要がある。歴史問題の解決は簡単ではないが、輸出管理の正常化など対応できるところから始めたい。
韓国の対日政策は政権が保守、革新にかかわらず、世論の影響を受けて変化しやすい面がある。12年には保守派の大統領だった李明博(イミョンバク)氏が求心力回復などを狙って竹島に上陸。日韓関係が悪化した。
尹氏は大統領選に勝利したとはいえ、ライバル候補との得票率の差はわずかだった。支持基盤は強固とは言えず、その対日政策には不安がある。ただ尹氏は就任に当たり、韓国内での一定の批判も覚悟の上で、対日政策を重視しようとしている。その点は日本側も配慮したい。
日韓は2年4カ月以上、首脳会談を開いていない。岸田氏は尹氏の大統領就任式への出席を見送ったが、両国の関係改善には首脳同士の直接対話が欠かせない。実現に向け環境を早期に整えるべきだ。