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2022.05.08 08:00

【コロナと子ども】異変の兆候を見逃すな

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 新型コロナウイルス禍が子どもの大きなストレスになっていることが改めて裏付けられた。国立成育医療研究センターがコロナによる子どもへの影響を調べたところ、小学高学年から中学生の1~2割に、うつ症状が見られたことが分かった。相談できる身近な機会の必要性が指摘されており、家庭や教育現場はきめ細かい対応を心掛けたい。
 調査は昨年12月に行い、小学5~6年生の9%、中学生の13%に中等度以上のうつ症状が見られた。一方、症状が出た場合に「誰にも相談せず自分で様子をみる」が小学5~6年生の25%、中学生の35%に上った。多感な思春期とも重なる。言い出しづらい面もあるのだろう。
 症状としては、気分が落ち込む、物事に興味を持てない、食欲がないなどの例が挙がる。異変の兆候を見逃さず、大人の側から主体的にアプローチしていくことが重要だ。
 コロナ禍が子どもたちの心の負担になることは、他のさまざまな調査でも明らかになっている。
 文部科学省によると、2020年度の小中学校の不登校児童生徒は前年度より1万5千人近く増え、19万6127人に。県内でも121人増の1238人となった。また、同センターが全国の小中高校生向けに昨年9月に行った調査では、「学校に行きたくない」が38%を占めた。
 ためこんだストレスや不安は、落ち着きのなさや粗暴な行動としても表れる。高知市内の小中学校では、児童生徒の勝手な振る舞いや暴言などで、現場が荒れる「学級崩壊」の事例が報告される。昨年秋時点の県内中学生による犯罪摘発、補導件数も前年同時期比で7割増となった。
 コロナを巡って学校現場は、一昨年3~5月に全校休校となったのを皮切りに、感染状況に翻弄(ほんろう)されてきた。校内のコミュニケーションやグループ活動が制約され、修学旅行や運動会などの行事も中止、縮小を余儀なくされた。
 児童生徒らは、集まることによる感染リスクに日々さらされながら、仲間をつくる機会、友人と共有する時間、自己表現や発散の場などを奪われた。それらがストレスにつながっている。
 感染状況は引き続き予断を許さない。専門機関は、親や指導者が子どもにしっかり寄り添い、向き合うよう説く。コロナ禍の長期化で親の方に余裕がなく、逆に子どもに負担を与えていたケースもあったとする。注意しなければいけない。
 本県は、人口当たりの不登校の児童生徒数が全国平均より多い状況が続いており、もともと心のフォローの問題は大きな県政課題でもある。県教委は、子どもの居場所づくりや相談態勢の拡充に取り組んでおり、その成果も問われる。
 子どもたちは年度が替わってしばらくは新たな環境の下、緊張感を持って過ごすが、その心労の蓄積がゴールデンウイーク後に露見し、行動に表れるとのデータもある。これからがリスクの高い時期でもあり、気を引き締めて臨みたい。

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