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2022.04.28 08:00

【物価高対策】生活支援効果を見定めて

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 物価高騰による国民生活への影響を軽減するのは政治の責務だ。しかし参院選をにらんで対策の規模を膨らませるだけでは、新たな負担を生んで財政環境をさらに厳しくする。効果の見極めが欠かせない。
 政府が決定した物価高騰の緊急対策は国費を6兆2千億円投じる。ガソリン価格抑制へ補助金の引き上げや、低所得世帯の子どもへの5万円給付など、家計や暮らしへの支援を打ち出した。
 物価高は国民の不満に直結しやすい。参院選を控え、与党の歳出圧力は強まっていった。対策が与党主導でまとめられる中、岸田政権の主体性は見えにくかった。
 年金生活者への5千円給付案は、ばらまきの批判を浴びていったんは白紙に戻したものの、政府は新たに浮上した低所得の子育て世帯への現金給付を受け入れた。誰にどういう支援が求められるのか、うまく行き渡るか十分に検討して設計されたのか疑念はぬぐえない。
 歳出規模は膨らみ、財源の手当てを巡っても二段構えの手法がとられる。一部は2022年度予算で確保した予備費から拠出し、減額分は今国会に提出、成立を目指す補正予算で穴埋めする。当初は予備費で対応可能とする政府、自民党と補正編成を唱える公明党が対立したが、自民が歩み寄った。参院選を意識したからにほかならない。
 予備費は新型コロナ対策予備費も充てる。これは、感染拡大や経済への悪影響に対応するため、使い道を定めずに確保している。
 もちろん、不測の事態に備えることは必要だ。ただ、予備費は、その使い道を国会の審議を経ずに政府の判断で決めることができる。国会の事後承諾が必要とはいえ、使途が拡大されて目的との関連性が薄い支出が行われかねない。
 今回、新型コロナ対策の一環として支出するのは、コロナ禍で悪影響を受けた家庭や事業者が物価高騰で一段と苦境に陥ったとの理由づけのようだ。もっともらしいが、それでは解釈は際限なく広がっていく。予備費の使途拡大には批判がつきまとう。国会軽視の姿勢にもつながりかねないだけに、抑制的な運用を心掛けるべきだ。
 野党は政府の緊急対策は規模が小さいと攻勢を強めている。大切なのは規模ではなく、まずはその内容だろう。実効性を高めるため充実した国会論戦を望みたい。
 ロシアのウクライナ侵攻などがエネルギーや原材料価格を押し上げ、円安の影響もあって光熱費や食品が値上がりしている。先行きも不透明だ。経済の回復が遅れれば、物価上昇に追いつく賃上げも難しくなりかねない。価格転嫁ができなければ企業の体力も奪われる。
 言うまでもなく、必要な施策が必要とするところで適切に行われることが重要だ。財源は無尽蔵ではない。国の長期債務残高は1千兆円を超えたとみられる。物価高が長期化すれば、対策を重ねていくしかない。秩序ある対応が必要だ。

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