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2022.04.23 08:00

【G20声明見送り】危機対応が遠のく分断

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 減速する世界経済を立て直すために一致した対応を打ち出すべき時に、協調体制さえ築けない。世界の国内総生産(GDP)の8割を占める多国間の枠組みが機能不全に陥っていては、その存在意義に疑問符が付けられてしまう。
 日米欧の先進国と新興国による20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議は、共同声明を見送った。ウクライナ侵攻を続けるロシアへの対応を巡り、参加国間の対立が浮き彫りになった。
 世界経済はエネルギーや食料の価格高騰に直面し、勢いが鈍化している。ウクライナ侵攻が混乱を深め、新型コロナウイルス禍も重くのしかかる。低所得国が抱える巨額債務の問題も波乱要因とされる。
 国際通貨基金(IMF)は2022年の世界の実質成長率を下方修正した。先行きの不透明感は一段と強まっている。ロシアの侵攻後、初めてのG20閣僚級会合が危機にどう向き合うのかが試された。
 国際社会が一枚岩でないことは、これまでの国連総会での対応にも表れている。国連人権理事会でのロシアのメンバー資格を停止する決議案への賛成数は、ロシア非難決議から大幅に減った。ロシアから各国に圧力があったようだ。G20内でも棄権を含め対応が分かれていた。
 日米欧はロシアに厳しい経済制裁を科す。制裁を主導する米国が会議からのロシア排除を訴え、欧州などが追随した。
 これに対し、新興5カ国(BRICS)などが擁護の姿勢を示した。中国やインドは、ロシアの主力産業であるエネルギー貿易を拡大するとみられ、制裁の効果を軽減させると予測される。各国の判断や対応は大きく異なる。そもそもロシアが参加すれば、協調した対応を導き出そうとしても無理がある。
 議長国のインドネシアのムルヤニ財務相は、「複数の加盟国が人道的危機に深い懸念を表明し、できるだけ早く戦争を終わらせることを求めた」と説明した。しかし、ウクライナ侵攻への見解や、早期終結のために取り組む方策をまとめるには至らず、世界経済の不安材料への対応でも議論は深まらなかった。亀裂がある中で成果は望みにくく、停戦しなければ混迷はさらに深まる。
 昨年夏のG20は、法人税率の引き下げに歯止めをかけるため、各国共通の最低税率を導入することで合意した。声明はその成果を「歴史的」と自賛し、存在感を示した格好だった。しかし今回は利害調整の難しさが鮮明になり、異例の展開が会議の在り方を問う結果となった。
 先進7カ国(G7)はロシアのG20参加を「遺憾」としている。米欧の代表はロシア代表の発言時に退席したが、日本は退席しなかった。
 鈴木俊一財務相は「会議の場でロシアを厳しく批判した」と述べている。米欧と協調して対ロ制裁を科してきただけに、受け止めには温度差がある。日本国民はもとより、米欧に対してもその意図を十分に説明する必要がある。

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