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2022.04.19 08:00

【「過疎」過半数に】価値観変える取り組みを

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 法律的に「過疎自治体」に位置づけられる市町村の割合が、ついに全国で5割を超えた。地方の衰退を端的に示す事象であり、人口偏在問題への危機感を強めねばならない。
 総務省は過疎法に基づき、人口減少率や財政力を基準に「過疎自治体」を指定する。2020年国勢調査の結果を受けて今月1日、新たに要件を満たした65市町村を追加した。これにより、指定団体は全国1718市町村の51・5%に当たる885市町村となった。
 県内では宿毛市が新たに指定された。34市町村のうち南国市、土佐市、佐川町、芸西村、日高村を除き、「一部過疎」の高知市を含めて29市町村が過疎自治体となる。
 過疎法は、過疎地域を「人口の著しい減少等に伴って地域社会の活力が低下し、生産機能、生活環境の整備等が他の地域に比較して低位にある地域」と定義する。全国の半分以上もの市町村が「他の地域より低位」になった異常さ、いびつさを直視すべきだ。
 地方の人口流出が顕著になったのは高度経済成長期。過疎法はそのさなかの1970年、議員立法により10年間の期限付きで制定され、当時は全市町村の2割強が指定された。
 法は、財政支援を通じた「過疎地の解消」を掲げ、過疎団体は、元利償還金の7割を国が地方交付税で手当てする過疎債の発行が認められた。しかし、過疎団体は増え続け、過疎法も定期的に衣替えしながら延長された。
 過疎は「質」的にも深刻化してきた。それは過疎法の名称の変遷が物語る。盛り込まれた単語は、過疎地域の「振興」「活性化」から「自立支援」に。昨年施行の新法は「持続的発展支援」を目的とし、過疎解消の理想とはほど遠くなった。
 この半世紀、手が打たれてこなかったわけではない。
 市町村側は、過疎債で生活環境の整備などを進めてきた。ただ、箱物に偏った、依存体質が強まったなどの指摘もある。自立への意識が問われる面はあるかもしれない。
 国策では、安倍政権が2014年、「地方創生」を掲げ、東京一極集中の是正と人口減対策を看板政策にした。確かに多額の財源を投入したが、選挙向けの看板の掛け替えとも批判され、「異次元の政策」と銘打ったほどの効果は出なかった。
 現在の岸田内閣は、距離や時間の壁をなくすデジタル技術を活用した「デジタル田園都市国家構想」を通じて地方の底上げを目指している。県レベルでは、集落活動センター事業をてこ入れして、小規模集落の維持を図ろうとしている。
 過疎に対して効果的な施策を模索、展開することは不可欠だろう。だが過疎の底流には、「都会の仕事が魅力的で給与も高い」「都会の生活は便利で華やか」といった住民の価値観もあったのではないか。
 一方、新型コロナウイルス禍で地方回帰も確実に広がっている。後者の価値観を発信、浸透させる取り組みに、より力を入れていくべきだ。

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