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2022.04.15 08:00

【円急落】金融緩和の重い副作用

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 円の下落基調が続いている。一時20年ぶりの円安ドル高水準となる1ドル=126円台を付けた。
 円売りが加速する背景には、インフレ対応を急ぐ米欧との金融政策の違いが改めて意識されていることがある。日銀の黒田東彦総裁が講演で、大規模金融緩和の維持を強調したことが一因となった。
 日銀は先ごろ、金利上昇を抑え込むために、利回りを指定して国債を無制限に買い入れる「指し値オペ」を実施した。市場はこれを金融緩和の継続と円安の容認と受け止め、円安はペースを速めていた。
 円相場は「黒田ライン」と呼ばれる1ドル=125円程度を突破する局面を迎えた。金融緩和継続の副作用が強まっている。マイナスの側面をないがしろにせず、市場との対話を続ける必要がある。
 新型コロナウイルス禍からの経済活動の再開やロシアのウクライナ侵攻で、原材料やエネルギーの価格が高騰した。各国は物価上昇への対応を迫られている。
 米連邦準備制度理事会(FRB)は金融政策の引き締めへと転じた。3月消費者物価は40年ぶりの上昇率となった。歴史的な物価高を抑えるため、今後の大幅利上げや保有資産の縮小も想定される。
 日本は景気回復の勢いが鈍く、超低金利からの出口戦略が明確にならない。円売りの背景には日米の金利差に加え、日本経済の成長率の低迷も指摘される。円の総合的な実力の低下は先行きに暗雲を漂わせる。
 円安は輸出企業には追い風となるが、かつての円高に対応するため生産拠点の海外移転が進み、以前のようなメリットは薄れたとの指摘がある。経常収支は赤字基調に陥るとの見方も出ている。
 高騰する輸入品価格を円安はさらに押し上げ、さまざまな商品の値上げの要因となる。2021年度の国内企業物価指数は、この40年で最大の上げ幅となった。3月の上昇も高水準だが、ウクライナ情勢の反映はまだ少なめとみられ、今後の一段の上昇は避けられそうにない。
 消費者物価の上昇水準はまだ抑えられているが、前年比上昇率はこれからプラス幅が拡大するとみられる。企業はコスト増加で収益が圧迫されると、小売価格に転嫁していく。既に食品や日用品の値上げが相次いでいる。日銀の4月地域経済報告は、全9地域で個人消費の判断を引き下げた。家計の負担はさらに増加する恐れが強く、防衛意識は高まっている。
 こうした状況下で価格転嫁が想定ほど進まないと、しわ寄せは下請けに向かいかねない。賃金の上昇が望めなければ消費にはつながらず、景気回復は遠のいてしまう。
 企業活動や国民生活への影響の軽減が求められる。政府は月内に緊急対策をまとめる。夏に参院選を控え、新たな財源を確保して対策を拡大しようとする動きも出ている。必要性や実効性を十分に判断しなければ、将来の負担を増やすだけになりかねない。慎重な対応が必要だ。

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