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2022.04.14 08:00

【文通費見直し】国会の姿勢が問われる

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 国民から厳しい目が向けられている国会議員向けの「文書通信交通滞在費」の見直しで、与野党が当面の対応について一致した。
 月1日の在職でも満額の100万円を支給される現行制度を日割り支給に改め、名称も「調査研究広報滞在費」に変更することで合意。改正法案は15日に成立する見通しだ。
 だが、このタイミングでの法改正は、24日投開票の参院石川選挙区補欠選挙で当選した議員に日割り支給を間に合わせるためであり、焦点だった使途の公開などは「引き続き与野党で精力的に議論する」として、積み残している。
 それどころか、名称変更により、今は「公の書類発送、通信のため」と法律で定めている使途が事実上、広がるようになる。これほど露骨な「お手盛り」もない。日割り支給は当然の見直しだろう。それ以外は、国民の求める改革の方向性とずれている。見直し論議をこれで終わらせてはならない。
 今回の見直し議論の発端は、昨年10月31日の衆院選で当選した日本維新の会の新人議員が、10月分を満額支給されたとして、問題提起したことだった。
 先の臨時国会では、野党側は日割り支給に加えて、使途公開と未使用分を国庫に返納できるようにする法案を提出した。これに対し、与党側は日割り支給の優先を主張して折り合わず、法改正は見送られた。
 舞台が通常国会に移り、文通費が政治課題になってから5カ月を経た現在も、基本的にその構図は変わっていない。使途公開には自民党を中心に根強い消極論があるとされ、今後の各党協議が難航するとの見方も強い。それだけ、今のブラックボックス状態が都合がよいのだろう。
 文通費は領収書の添付や使途の公開も求められず、残金の返還も不要。「第2の給与」として重宝され、秘書の給与や事務所費などにも充当されているとされる。
 だが、時代は変化した。政治資金の使い道にはよりコンプライアンスや透明性が求められ、使途の明確化や領収書の管理は社会の常識だ。文通費と近い存在といえる地方議会の政務活動費も、時代の要請に応じて透明性を高めてきた。事務作業が煩雑だというのは、使途を公開しない理由にはならない。
 百歩譲って、国民の声の把握や交流など多様な政治活動に費用が足りないというのなら、その必要性を堂々と訴えて「業務上の必要経費」として制度化すればよい。ただし使途のガイドラインは必要で、後ろ指をさされないよう使用実績も透明化すべきだ。今回のような、なし崩し的な使途拡大は不信感が募るだけだ。
 文通費の議論を通じて国民が問うているのは、公金の適切な利用だ。同時に、明らかにおかしいと思われていることに国会がきちんと向き合い、修正できるかどうかという姿勢の問題もある。
 既得権益にこだわり、これ以上は手つかずで今国会が終わるようなら政治不信はなお深まるだろう。

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