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2022.04.13 08:00

【露の人権理追放】国連改革は避けられない

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 ウクライナに侵攻したロシアについて、国連総会は人権理事会での資格を停止する決議案を採択した。侵攻後、3回目の決議で初めて強制的な措置に踏み切った。
 人権理は国連加盟国での人権侵害の特定や調査の権限を持つ。隣国の主権を侵し、無差別攻撃で市民の人権を蹂躙(じゅうりん)するロシアが、その役目にふさわしくないと各国が判断したのは当然だろう。国際社会で圧力を一段と強め、自重を促さなければならない。
 ロシア軍の蛮行が明らかになるにつれ、国際社会の非難が強まっている。首都キーウ(キエフ)近郊の諸都市では、市民への虐殺や拷問など「戦争犯罪」が疑われる惨状が次々と判明した。ウクライナ当局や国連機関の調査が始まったが、被害の確認には時間を要する見通しだ。
 ロシアは住民への残虐行為を否定するものの、住民の証言や衛星写真の分析から関与が強く疑われる。真相を明らかにし、責任を追及する必要がある。
 さらなる疑惑も浮上した。ウクライナ当局は激戦地の東部から市民がロシア領内へ強制移送されたと訴える。子どもを含む40万人以上が「選別キャンプ」を経て、シベリアやサハリンなどへ送られたという。
 ロシアはもともと、ロシア系住民の保護を名目に侵攻し、同国メディアも「避難民」のロシア入りを報じている。住民の意思は不明だが、多数が移送された可能性は高い。「保護」ではなく「連行」なら、旧ソ連の独裁者スターリン時代の強制移住政策をほうふつとさせる。極めて重大な人権侵害になろう。
 国連総会では、日米英など93カ国の賛成に対し、ロシアや中国など24カ国が反対。58カ国が棄権した。これまで2回の非難決議より賛成は減ったが、ロシアが加盟国に2国間関係に悪影響を及ぼすと圧力をかけた影響が指摘される。
 「分断を深刻化させる」(中国)という懸念も否めないとはいえ、国際社会として現在進行形の人道危機を看過することは許されまい。その姿勢を明確に、ロシアに示し続けることが重要だ。
 ウクライナのゼレンスキー大統領は安全保障理事会でのオンライン演説で、国際法順守や安保理などの国連改革を強く訴えた。自国を有利にするための外交手法とはいえ、当事者としての説得力を持って問題点を突いたことは確かだろう。
 国際平和を担う安保理は長年、改革の必要性を指摘されながら、今回も機能不全に陥った。常任理事国のロシアが当事者となり、拒否権に象徴される「大国一致の原則」の限界は浮き彫りになった。
 他国を侵略したロシアが、世界の平和と安全の維持に果たして責任を負える立場なのか。人権理と同様の疑問を禁じ得ない。
 安保理は、ロシアがその場をプロパガンダ(宣伝工作)に利用したことで、既に威信は大きく傷ついている。改革への姿勢を欠けば、さらに地盤沈下が進みかねない。

高知のニュース 社説

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