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2022.04.12 08:00

【参院選合区継続】制度の固定化を危惧する

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 約3カ月後に迫った次の参院選で、高知県は三たび、徳島県との合区選挙になる。県民の多くが望む合区の解消が実現しなかったのは残念であり、固定化を危惧する。
 合区は「1票の格差」是正のため2016年参院選で導入された。格差が4倍後半から5倍だった10年、13年の参院選を「違憲状態」と判断した最高裁が、都道府県単位の選挙区を改めるよう求め、徳島・高知、鳥取・島根が対象となった。
 地域の声を国政に伝える手段が減らされるのだから、対象県の反発は当然だ。その弊害は過去2回の選挙で、投票率低下という形で顕著に表れた。候補者側にも、広い選挙区の活動は負担が大きく、政見や人物を浸透させることが難しいと不評だ。
 もともと合区は、1票の格差是正のための緊急避難措置とされた。このため導入時、「次の参院選までに抜本見直しで結論を得る」とし、解消を公約に掲げた自民党は改憲4項目の一つにして解消を図った。
 だが、改憲に慎重だったり、大選挙区制を求めたりする他党との協議は進まず、行き詰まった末、19年の選挙から、候補者を立てられない県の候補を比例代表で優先的に処遇する「特定枠」を導入した。
 弥縫(びほう)策の上に弥縫策を重ねたような対応であり、この時もまた、自民党幹部らは「次の22年までに解消を目指す」と訴えた。にもかかわらず今夏の3度目の合区選挙である。
 この間議論が進まなかったのは、19年参院選の「1票の格差」を合憲とした、20年11月の最高裁判決の影響もあった。合区や特定枠を通じた格差の縮小が評価されたことで、直ちに解消すべきだとの機運が下がったという。参院の在り方を与野党で議論する「参院改革協議会」は立ち上がったものの、踏み込んだ議論は行われなかった。
 現在、政府も参院も自民党も、合区が解消できていないことの説明を何もしないまま、3回目の選挙を迎えようとしている。対象県への説明責任という点でも不十分だ。
 国政選挙における「投票価値の平等」と「都道府県代表の確保」の両立は確かに難しい命題だろう。だが識者の間には、地方問題を扱う権限は確保するが外交問題などは衆院に譲る―などといった参院の権限の縮小を図れば、投票価値の平等が退いてもよいとの考え方もある。そもそも、代表を出す機会が減った合区対象県は不平等だとの指摘もある。
 今後、都市と地方の人口格差の拡大で合区対象は増える可能性が高い。衆院のカーボンコピーとやゆされる参院の在り方に、各党とも正面から向き合うべきだ。
 地方代表が減るという点では、決定済みの衆院小選挙区定数「10増10減」に対し、今になり自民党の有力者らが反対の声を上げている。
 だが、自分の足元に火が回ってきた途端、自分たちで提案した手法に反発する格好となっている。地方の声をどう国政に反映させるか。常に問題意識を発信し、議論していなければ、説得力を伴わない。

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