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高知新聞PLUSの活用法

2022.04.10 08:00

【森林税】有効活用へ知恵を絞れ

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 気候変動対策の一環として、2019年度から国が地方自治体に配分し始めた「森林環境譲与税」の活用が進んでいない。本県のような森林県には貴重な財源であり、納税者の支持を得るためにも、有効活用へ知恵を絞るべきだ。
 森林環境譲与税は、山の荒廃や林業の担い手不足に悩む自治体を支援するために創設された。森林整備だけでなく、人材育成、木材利用の推進、啓発事業などに充当できる。
 1人につき年間千円を個人住民税に上乗せ徴収し、税収は年約600億円。これを人工林面積、人口、林業従事者数の三つの基準で、市町村と都道府県に配分する。実際に徴収が始まるのは24年度からで、別の財源を使って、19年度から前倒し配分が始まっている。
 国は一体的な取り組みとして、19年春から森林経営管理法を施行。放置された私有林を、市町村が預かって民間業者に経営を任せることができるようにし、税はそれに必要な費用に使えるようにもした。
 しかし、林野庁などの調べでは、19、20年度に全国の市町村に配分された約500億円のうち、使われたのは約229億円。54%の271億円は基金に積み立てられ、使われていないことが明らかになった。
 理由には、制度が始まったばかりで使うための態勢が整っていないことや、小規模市町村ではマンパワーが限られていることが挙がる。また、配分額を決める基準に人口が使われたことで、林業関係の取り組みとは縁遠い都市部への交付額が手厚くなっていることも一因とされる。
 こうした状況に自民党などでは制度の見直し論が浮上しているという。この財源は、本県を含めた中山間地域の自治体が、長い要望活動の末に手にした経緯がある。温暖化対策や地方の浮揚につながることを、実証していかなければいけない。
 ただ、本県も有効活用できているとは言い難い状況だ。19、20年度の2年で全国3位の約21億円が配分されたが、市町村分の56%が未使用だった。小規模自治体でノウハウや人材面がネックになっているようだ。
 一方、その問題を解消しようと、幡多地域の6市町村は4月、広域で業務に当たる専門組織「森づくり推進センター」を立ち上げた。他の小規模自治体が参考になるような取り組みを期待したい。
 制度の見直し論では、都市部に多く配分されることのいびつさを指摘する声が多いようだ。だが、山の問題は産地だけでは解消できず、流通や需要といった「川下」分野と一緒に考える必要がある。大型木造ビルの普及など都市部の取り組みは欠かせない。「川上」から都市部向けに、需要拡大のための使途を積極的に提案することがあってもよい。
 本県では「県民参加の森づくり」を掲げ、県税の森林環境税を03年度から導入している。現行の課税期間は22年度末で切れ、24年度から国の税の徴収が始まる。目的が重なる二重課税にならないよう、県税継続の是非を含めて議論が必要だ。

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