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2022.04.08 08:00

【県内公共交通】持続可能な在り方探れ

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 県内の公共交通機関が、新型コロナウイルス禍で苦境に陥っている。この機会に持続可能な在り方を探るべきだ。
 路線バスと路面電車で県中部の「足」を担うとさでん交通は、通年でコロナ禍に見舞われた2020年度、出控えによる乗客減や、黒字部門だった高速・貸し切りバス事業の落ち込みで、過去最大の8億2400万円の最終赤字を出した。
 21年度も厳しい状況は続き、1億円超の赤字を計上する見通しだ。さらに、3月末に公表した22年度以降の中期経営計画では、コロナ禍からの回復は段階的と想定し、公的支援がない場合は、22年度に資金ショートと債務超過に陥るなどと試算。それらを防ぐには、5年間で計14億円以上の支援が必要とした。
 筆頭株主である県や、出資する市町村からは現段階で支援への異論は出ていないが、これから補助金を予算化する段階では、それぞれの議会からの注文も予想される。とさでんにはまず、経営計画に盛り込んださまざまな経営改善策の着実な実行が求められる。
 ただ、コロナが収束したとしても、経営環境の構造的な厳しさは変わらず、むしろ増すばかりだ。
 人口減少は一層進み、移動を不要とするオンライン手段も普及する。県中部の公共交通は、もともと採算が取れない中、とさでんが黒字事業も扱うことで成り立ってきた。路線バスや電車の赤字が増え、会社の経営努力の余地も小さくなる中、その運営の仕組みには限界がちらつく。住民の足を守っていく方法を、行政側が主体的、戦略的に考えなければならない。
 動き始めている自治体もある。「乗り換え型交通」への再編を検討し始めた高知市だ。
 検討するのは、バスが走る区間は乗客の多い幹線道路とし、地域の支線は、市の補助する乗り合いタクシーが担う仕組み。試算では、バスだけなら膨らむ一方の公的負担を現状並みに抑えられるという。ただし、乗り換えの手間が生じるようになる。機能させるためにも、市民の合意形成を大事にしてもらいたい。
 公共交通の厳しい状況は、とさでんに限らない。第三セクター、土佐くろしお鉄道もコロナ禍の乗客減により、経常損益ベースで20年度は過去最大の約6億6千万円の赤字に。21年度は7億2千万円の赤字で最大赤字幅を更新する見込みだ。
 こちらは、県や沿線自治体で積み立てている基金で赤字を充当しているが、基金の目減りの加速は、納税者の肩にのしかかってくる。
 JR四国もコロナ禍に見舞われた20年度は決算指標が軒並み悪化し、同年度末、国が5年間で1千億円を超える財政支援を決めたことで息をついている状況だ。
 人口減少地域の公共交通の運営は、「公」の占めるウエートが大きくなっている。サービス水準をどこに置き、どの程度の税負担をしていくのか、議論を積み重ねていくことが欠かせない。

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