2022.04.07 08:00
【避難民受け入れ】欠かせぬ支援の継続性
早期の帰国を望む人も多いようだが、現地の情勢は緊迫し、和平を見通せる状況にはない。避難が長引く可能性を踏まえ、官民が連携して支援する必要がある。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によれば、戦闘の長期化に伴って国外に逃れたウクライナ国民は約400万人を超えている。
ポーランドでは避難民の流入が止まらず、受け入れ態勢も限界に達しつつあるという。こうした周辺国への経済支援に加え、日本への避難希望者を受け入れることは国際的な責務といってよい。
日本政府は、林芳正外相のポーランド派遣に使われた政府専用機に避難民を搭乗させる措置を取った。人数の少なさや、ほかの避難民との公平性を疑問視する声はあるが、現地は情報も錯綜(さくそう)していよう。
国内世論や国際社会にアピールする狙いがあったとしても、迅速な対応は一定評価できるのではないか。今後も積極的に受け入れる姿勢を継続して示すことが重要だ。
入国した避難民の生活支援でも息の長い取り組みが欠かせない。故郷への帰国を希望していても、現地でいつ安全が確保されるかは不透明と言わざるを得ない。
避難民にとって日本入国は生活再建へのスタートにすぎない。政府は生活費や医療費の支給に加え、職業訓練や日本語研修などの支援を打ち出した。多くの企業も受け入れを表明している。習慣や言葉の違いといった新たな生活への不安を和らげるよう環境整備が急がれる。
一方で、政府対応には曖昧さも残る。ウクライナから逃れた人は「避難民」とし、国際条約上の「難民」とは異なる枠組みで受け入れた。90日間の「短期滞在」の在留資格で入国。その後は1年間就労可能な「特定活動」に変更できるとする。
難民条約は人種や宗教、政治的意見などを理由に迫害を受ける恐れがあって、国外にいる人を難民と定義する。戦争や災害は定義になく、ウクライナからの避難民はただちに該当しないとみられる。
日本は難民認定が厳格で、国内外から「難民鎖国」と批判されてきた経緯がある。2020年の認定数はドイツの約6万3千人に対し、日本は47人にとどまる。
難民と認定されれば、定住して国民年金や児童福祉手当などの受給資格も得られるが、「避難民」は法律上の規定がない。その権利も曖昧なままになっている。今回は緊急的な対応といえるが、避難民の保護に関する手続きや権利を明確にする法整備は必要だろう。
激変する国際情勢の中で、難民や避難民の問題にどう対応するか。先進国の責任と向き合う機会としなければならない。