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2022.04.06 08:00

【民間人「虐殺」】戦争犯罪の究明を求める

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 後ろ手に縛られた遺体が路上に横たわる。空き地を掘っただけの集団埋葬場には遺体が入っているとみられる黒い袋が並ぶ。ウクライナのキーウ(キエフ)州での惨状だ。
 ロシア軍が撤退して被害が明らかになってきた。街は破壊され、多数の市民の犠牲が伝えられる。ウクライナ当局は、数百人の遺体を確認している。これから捜索が本格化し、死者数は増えるとみられる。さらに、「市民の虐殺や拷問があった」と訴えている。
 首都キーウ近郊ブチャの副市長は、ロシア軍撤退後に確認した市民約300人の遺体のうち、約50人は処刑されたと証言した。報道では、至近距離からとみられる頭部を撃たれた平服姿の遺体や、切断された遺体の目撃証言もあるという。
 ブチャを視察したゼレンスキー大統領は、「ジェノサイド(民族大量虐殺)だ」と糾弾した。陰惨な光景に、各国首脳からも一斉に非難の声が上がっている。
 ウクライナ当局は、「戦争犯罪」の立証のため遺体の司法解剖や捜査を進め、国際刑事裁判所(ICC)に裁きを求めている。欧州連合(EU)もウクライナやICCと協力して証拠収集に取り組む意向を示している。徹底した究明を求める。
 他国の主権を侵す軍事侵攻はもとより、市民や軍事目標以外への故意の攻撃は認められない。国連のグテレス事務総長は、「深い衝撃を受けた」との声明を発表し、独立した調査の必要性に言及している。あらゆる措置を講じて責任を追及していかなければならない。
 そうした取り組みを行っても、国際法に基づき訴追して処罰するのは極めて困難とみられている。ロシアのICC非加盟などの要因が立ちはだかる。そもそもロシアが捜査に協力するとは思えない。
 しかし、そうであってもまずは証拠の収集を行うことが重要で、事実を解明していく必要がある。それらを突き付けることで新たな対応につなげることが重要だ。
 ロシアはこれまでにも、子どもたちが避難している劇場や病院、商業施設への攻撃が伝えられた。原子力施設さえ対象にしている。市民を退避させる人道回廊の開設にも非協力的だ。こうした対応が孤立と反発を強めてきた。
 キーウ近郊の惨禍についてもロシアは関与を否定し、写真はウクライナ政府の挑発だと主張している。こうした発言の真偽も調査で明らかになるはずだ。
 首都制圧に失敗したロシア軍は南東部への攻勢を強めている。要衝マリウポリには包囲攻撃が続き、数千人の死亡が伝えられる一方、市民の退避は完了していない。人道危機は強まっている。
 国際社会ではロシアへの非難が拡大し、追加制裁の動きが出ている。結束した対応で、早期の停戦を実現することが欠かせない。
 ウクライナからの避難民20人が日本に到着した。日本の人道支援の在り方を考える機会でもある。

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