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2022.04.05 08:00

【岸田内閣半年】まだ定まらない独自色

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 岸田文雄首相が就任して半年を迎えた。共同通信社の世論調査では、内閣支持率は60%辺りを維持している。政権発足時をやや上回る水準であり、新型コロナウイルス感染症対策などが一定の評価を受けていると見ることができる。
 ただ、「岸田色」となると、いまひとつ判然としない印象がある。打ち出した政策をすぐに転換して、こだわりや熟度が気になる局面もあった。課題は山積する。自慢の「聞く力」はもとより、発信する力もまた不可欠だ。
 最優先の課題は新型コロナ対策だった。前任の菅政権は、対応が後手に回ることに批判が高まり、退陣につながった。
 岸田首相は最悪の事態を想定し、先手の対策で臨むと訴えた。感染「第6波」は、まん延防止等重点措置が3月下旬までの2カ月半ほど、全国のどこかに出されていた。社会経済活動とのバランスが問われる中、第7波の兆しも出てきた。対応が甘いと失望を招きかねない。
 政策決定を巡り方針がぐらつく場面も見られた。
 新型コロナ対策の水際対策を巡り、国際線の新規予約の一律停止を要請しながらすぐに撤回した。18歳以下への現金・クーポン計10万円給付は、自治体の反発を受けて現金の一括給付を容認した。「佐渡島(さど)の金山」の世界文化遺産登録は見送り方針から転換し、年金生活者らの支援策として与党が提案した5千円給付案を見直した。
 柔軟な対応はいい。だが、前段での考察や制度設計の在り方に疑問も浮かぶ。政治の信頼にも関わるだけに十分な検討と説明が必要だ。
 成長と分配の好循環を目指す「新しい資本主義」は影が薄い。成長重視の「アベノミクス」で拡大が指摘された格差の是正を掲げながら、その方策は明確になってはいない。
 暮らしは食品や日用品の値上げが相次ぎ、ガソリンも高値が続いている。穀物や原油価格のさらなる上昇に円安もあり、景気の先行きは不透明感が漂う。物価高と景気後退が重なるスタグフレーションが懸念される。コロナ禍で疲弊した生活への影響の軽減策を探る必要がある。
 ウクライナに侵攻したロシアに各国が相次いで制裁を打ち出している。これに対しロシアは、日本との北方領土問題を含む平和条約交渉を中断すると発表した。交渉は進展のない状況で仕切り直しは必然だ。
 日本側は制裁の一方で、ロシアとのエネルギー面での関係は維持する方針を示す。こうした姿勢が誤って受け止められないように、しっかりと説明する必要がある。
 日本学術会議の会員候補の任命拒否や森友学園を巡る財務省決裁文書改ざん、参院選広島選挙区の買収事件に絡む自民党資金などは解明されていない。歳費とは別に支給される「文書通信交通滞在費」の見直しに指導力を発揮したとは思えない。
 夏には参院選が行われる。野党も厳しい監視と論戦で存在感を高めていかないと埋没しかねない。

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