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2022.04.01 08:00

【値上げの春】施策はばらまきを排して

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 4月となり新年度が始まった。気分一新といきたいが、ロシアのウクライナ侵攻は続き、新型コロナウイルス感染の再拡大の兆しなど、明るい話題ばかりではない。
 暮らし面でも価格改定の影響が大きい。チーズや家庭用食用油、トイレットペーパー、紙おむつなど食品や日用品が値上げされる。今後の値上げも相次いで発表されている。
 新型コロナ禍からの経済活動の再開などで、エネルギーや穀物の国際相場は上昇していた。そこにウクライナ情勢の緊迫、侵攻が拍車をかけた。制裁や報復で世界的な混乱は避けられそうにない。物流コストの増大も相まって、さらなる原材料の高騰が想定される。
 円安の進展も気掛かりだ。輸入物価の上昇につながり、家計や企業業績に一段の打撃となってしまう。
 商品やサービスに適切にコストを反映できればいいが、下請け企業にとっては発注元との価格交渉が難しい場面もある。公正取引委員会は価格転嫁ができているか緊急調査に乗り出すと発表した。不当なしわ寄せは防がなければならない。
 政府、与党は物価高騰に対応するための緊急対策を4月末に決定する予定だ。岸田文雄首相は、原油高対策や食料の安定供給など4本柱で取りまとめるように指示している。
 燃油や飼料に穀物を使う農林漁業者、運輸業者への支援を拡充するように内容を詰めているようだ。さらなる原油高に備え、ガソリン税の一部を減税する「トリガー条項」の扱いも検討するという。価格抑制が期待される一方、導入に伴う混乱も想定される。制度をどう修正するかなど、課題と十分に向き合うことが対策の実効性を高めていく。
 緊急対策の支出額は1兆円超とする方向のようだ。財源には、新型コロナ対策の予備費の一部を充てることも想定される。その場合、予備費の名目であるコロナ対策とどう整合するのか、丁寧な説明が欠かせない。予備費が使いやすいのならばなおさら、国会のチェックの在り方を充実させることが課題となる。
 4月からは公的年金の支給額が引き下げられる。改定の指標である賃金が新型コロナの影響などで下がったためだ。
 これに関連して、受給額が減る年金生活者らの支援策として与党は5千円給付を提案した。しかし、野党は「参院選目当てのばらまき」と批判し、政権内でも慎重論が強まり見直しに追い込まれている。
 支給額は物価や賃金変動に連動して改定する。そこに不備があるのならば制度を改正するのが筋だ。困窮度合いに関係なく支給されるとなると、選挙目当ての批判を受ける。
 言うまでもなく、この危機を乗り切る対策は必要だ。スピード感も欠かせない。しかし、満足な制度設計がなされていない思いつきのような対策では効果は期待できない。
 新型コロナ感染はリバウンドの可能性が懸念され、景気回復の足取りを重くしかねない。財源も無尽蔵ではない。

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