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2022.03.30 08:00

【進む円安】物価高への意識も強く

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 金融政策の正常化を進める米欧と日本の姿勢の違いが一段と鮮明になったことを受けて、円安が進んでいる。外国為替市場は1ドル=125円台を付ける局面となった。6年7カ月ぶりの水準だ。
 日銀が利回りを指定して国債を無制限に買い入れる「指し値オペ」を実施したことが一因だ。市場は日銀が金融緩和を継続し、円安を容認する姿勢を明確にしたと受け止め、円安はペースを速めた。
 日銀はさらに、1年前に制度導入を決めてから初めて、「連続指し値オペ」を開始した。金利の上昇を日銀が上限とする0・25%の範囲に抑えるため、3日間行うとする。
 米国は新型コロナウイルス禍からの景気回復を優先して金融緩和を続けてきた。しかし、歴史的なインフレを抑え込むために、米連邦準備制度理事会(FRB)は金利を引き上げへと転じた。日米の方向性の違いは明らかだ。
 金利差は円安を招いた。自動車関連企業などの業績には追い風となるが、一方で原油や穀物など輸入価格の上昇につながることに警戒が必要だ。そもそも円の総合的な実力は50年前の水準まで落ちてきている。購買力低下は資源を輸入に頼る日本に重くのしかかる。
 日本の経常収支は赤字となっている。原油高などに伴う貿易収支が悪化し、1月の経常赤字は過去2番目の水準となった。ドル需要は円売り圧力を高める要因になり、さらにロシアのウクライナ侵攻が物価上昇を強めている。
 資源高と円安が同時に進めば輸入コストは増大する。それを価格転嫁できれば業績への影響は緩和が期待できる。だが、消費者の生活防衛意識が強まることは必至で、景気を低迷させかねない。
 既に消費者物価は徐々に上昇している。エネルギーの伸びが特に大きい。携帯電話の通信料が割安な料金プランで大幅に下がっているため、全体の上昇幅を抑えているが、1年たてばその影響も消える。
 日銀の黒田東彦総裁は4月以降、消費者物価の上昇率がプラス幅を拡大するとの見方を示し、物価上昇目標とする2%程度の伸びとなる可能性に言及している。一方で、エネルギー価格の上昇は経済に悪影響を与えるとして、2%に達したとしても金融引き締めに転じることには否定的な姿勢だ。
 景気回復感が乏しい中で金利は上げにくい。しかし、金利を抑え込もうとしたら円安に振れる。身動きが取りにくい状況にある。
 日米金利差からの円安基調は続くとの専門家の指摘がある。異次元の低金利を続ける中で、出口戦略をいかに描くのか。日銀は市場との対話を続けることが不可欠だ。
 また政府は物価上昇に対応する緊急対策をまとめる。国民生活に与える影響を和らげることは必要だ。そこに参院選をにらんだ対策の色合いがにじめば、政治への信頼を揺るがせる。支援策は実効性を吟味することが欠かせない。

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