2022.03.28 08:00
【SMBC日興】市場の信頼裏切る不正だ
市場の公平性や公正性を維持する「市場の門番」の役割を担うべき証券会社が、組織的不正の疑念を持たれること自体、市場の信頼を大きく損ねると言わざるを得ない。企業風土や内部管理の在り方が厳しく問われよう。
証券取引等監視委員会が昨年6月に強制調査に入り、今年3月に東京地検に告発した。逮捕された副社長のほか、これまでに幹部4人が逮捕・起訴され、法人としてのSMBC日興も起訴された。
関係者らによると、同社が扱う「ブロックオファー」と呼ばれる取引に絡み、株価を維持しようと不正に大量の買い注文を入れるなどした疑いが持たれている。
ブロックオファーは、立会時間外に大株主からまとまった株を買い取り、投資家に転売。取引がまとまった日の終値が基準となる。顧客である大株主の売却益が激減する事態を避けるため、価格が下がり過ぎないよう買い支えたという。
東京地検特捜部は、株主の窓口となる営業部門と自社資金で運用する自己売買部門が連携し、役員が報告を受けて了承するという組織的不正の構図を描いているようだ。
これに対し、幹部らは「正当な業務だった」などと違法性を否認しているとみられる。真相は捜査の進展を待つ必要があるが、少なくとも情報管理のずさんさやチェック機能の不十分さは否めないだろう。
証券業界では、外部から疑念を持たれないようにするため、ブロックオファー銘柄は自社で買わないのが一般的な認識だ。ほかの大手証券会社ではそうした「常識」に加え、自己売買に関する内部ルールを設けている。
ブロックオファーの取引価格が決まる日には運用部門が対象銘柄を売買することを禁止したり、自己売買が重なった場合にはブロックオファーを延期したりするよう規制しているという。
だが、SMBC日興はこうした不正を防止する手段を講じていなかったとみられる。さらに、社内で不審な売買を監視するシステムが警告を発したものの、問題視されずに必要な対応が取られていなかったことも判明している。
不正取引の舞台になった自己売買部門は、2009年に三井住友フィナンシャルグループ入りしてからできた、後発の部署だったようだ。実績づくりが優先されるあまり、監査部門の発言力が弱くなっていたとの指摘もある。
その結果、コンプライアンス(法令順守)意識が徹底されず、証券会社として「禁じ手」を犯したのであれば、まさに経営責任が問われる事態だろう。市場の門番として自ら真相を明らかにし、再発防止を期する姿勢が求められる。