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2022.03.24 08:36

なぜ2つ?大正地域のひな飾り行事「四万十街道」と「大正浪漫」願いは同じ 高知県四万十町―支社局「発」!ニュース深掘り

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旧門脇家住宅のひな飾り。愛媛にも広がっている「四万十街道ひなまつり」の発祥地だ(写真はいずれも四万十町大正)

旧門脇家住宅のひな飾り。愛媛にも広がっている「四万十街道ひなまつり」の発祥地だ(写真はいずれも四万十町大正)

 高岡郡四万十町の大正地域で、二つのひな飾りイベントが同時期に開催されている。「四万十街道ひなまつり」と「大正浪漫(ろまん)ひなまつり」。両会場の距離は1キロ程度しかない中、なぜ2種類の類似イベントが開かれているのか―。探っていくと、古里のにぎわいを願う、それぞれの住民の思いがあった。

 大正地域の轟公園にある国登録有形文化財、旧門脇家住宅。江戸や昭和など、長く受け継がれてきたひな人形が趣ある古民家に並ぶ。いにしえの桃の節句はこうだったかと、訪れた人々は静かに人形を見つめている。

7市町に拡大
 2007年、町郷土資料館にあった古いひな人形が隣接する旧門脇家住宅に置かれた。すると住民らが「一緒に飾って」と人形を持ち寄り、見事な展示ができた。

 評判が広がって約1カ月で千人が訪れ、08年の梼原町を皮切りに他市町にも拡大。そうして定着したのが「四万十街道ひなまつり」だ。今年の開催地は高知、愛媛両県の7市町(終了分含む)。大きく成長したイベントの発祥は、大正地域だった。

源流は着物ショー
今年の「大正浪漫ひなまつり」で熊野神社に登場した「瓦びな」。展示も年々進化中だ

今年の「大正浪漫ひなまつり」で熊野神社に登場した「瓦びな」。展示も年々進化中だ

 一方、約1キロ北の大正中心街。一帯の商店や民家などに段飾りなどが点在する。「どう回ればいいですか?」。週末を中心に、町外から訪れた人が道を尋ね、話に花を咲かせている。

 こちらは「四万十街道―」とは別の「大正浪漫ひなまつり」。13~18年に地元女性らの発案で催した「大正浪漫ふぁっしょんしょう」がルーツにある。

 たんすに眠るレトロな着物で、地名にちなんだ大正ロマンあふれるイベントを企画し、注目された。だが、人手不足などで継続を断念。代替の企画として「四万十街道―」もヒントにしたひな飾りイベントを発案し、19年の初開催に向けて人形を募ると、段飾り50組を含む約800体もの人形が町内外から集まった。

 新型コロナウイルスの影響で20年は中止し、21年からは密防止で会場を分散。美容院を営む西森周子(ちかこ)さん(67)は「ひな人形も着物姿で、以前の着物イベントとつながる。着物を着て見て回って」と、着物の貸し出しと着付けをクリーニング代のみで請け負い、新たな楽しみ方も提案する。

託した人の思い
 後発ながら進化を続ける「大正浪漫―」。「四万十街道―」とは日程を確認し合う関係ながら、催事の一本化は具体化していない。

 これといった理由があるわけではないが、あえて挙げるなら、自分たちが育ててきた「大正浪漫」というコンセプトへの思い入れ。「―ふぁっしょんしょう」の流れを継ぐイベントができれば、との思いは今もある。

 地域のためにアイデアを練り、取り組んできた活動への愛着。それは「四万十街道―」にも共通している。お互い同じような思いを抱き、二つのイベントが共存しているのだ。

 そんな住民の頑張りを支えるかのように、ひな人形は増える。県内各地からの寄贈が後を絶たず、事務局の町商工会大正支部は保管場所に苦慮しながらも、開催中は届いた人形の一部を追加して飾る。

 「これは立派!」。新たに飾り付ける女性たちの声が弾む。メンバーの一人は「捨てたりはなかなかできんもん。思い切って出されたと思う」。託した人の思いに心を寄せる。

 「大正浪漫―」実行委員長の市川敏英さん(67)も言う。「ひな人形は親子の絆であり、子どもが育った証し。たくさん寄贈されると困る状態だが、大切にしてきた気持ちは受け止めたい。ぜひ親子で見に来てほしい」

 大正地域の展示は31日まで。(小林司)

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