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2022.03.21 08:00

【重点措置全解除】抑止効果の検証が必要だ

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 新型コロナウイルス感染拡大の第6波に伴い、18都道府県に適用されてきた「まん延防止等重点措置」は期限のきょう、全て解除される。
 全国では今も自宅療養者が37万人を超え、第6波の収束と言うにはほど遠い。それでも政府は経済活動の回復に向け、従来の基準を変更してまで全面解除に踏み切った。政治的な判断との見方もある。
 重点措置の感染抑止策は果たして適切だったのか。検証して、今後の対策に反映させる必要がある。
 オミクロン株の急拡大で、1日当たりの新規感染者数は2月初めに10万人を超えた。重点措置の適用地域は一時、36都道府県にまで広がった。全国のどこにも適用されない状況は約2カ月半ぶりとなる。
 新たな解除基準は、政府分科会が11日に了承した。新規感染者が微増や高止まりしても病床の使用率など医療負荷が軽減する見通しか、病床使用率などが50%以上でも新規感染者が減少する傾向にあれば解除できるとした。
 従来は新規感染者の減少傾向と医療負荷の低減が条件だったが、その基準では全面解除には至らなかっただろう。青森県や香川県は感染者数が増加傾向で、愛知県や大阪府は病床使用率が50%を超えたままだ。
 全国の新規感染者数がピーク時の半分程度になったとはいえ、収束が見通せない中での基準変更である。「解除ありき」の姿勢では、重点措置の意義や効果を自ら否定したことにならないか。
 政府の基本的対処方針は、飲食店に対する時短営業や酒類提供の自粛要請を対策の中心としてきた。しかし、今回は対応すべき対象がずれていたようにみえる。
 感染力の極めて強いオミクロン株の特徴から、第6波でのクラスター(感染者集団)は保育所や学校、高齢者施設などで多発した。方針にも保育園児の可能な範囲でのマスク着用を加え、5~11歳のワクチン接種も始めたが、結果として「波」は収まっていない。
 岸田文雄首相は解除後も「平時への移行期間」と位置付けた上で「警戒」を続けるよう呼び掛けた。収束と言える状況にはないと認めたに等しい。
 これまでに措置が解除された地域でも新規感染者は依然高い水準が続いている。本県でも、200人を超える日があり、高齢の感染者などで死者も相次いでいる。さらに感染力の強いオミクロン株の派生型による再拡大の恐れも指摘される。
 緊急事態宣言や重点措置は国民に感染抑止の行動を促すために設けられたが、政府自身がその取り扱いに振り回されているように見えなくもない。今回の措置では何が問題だったのか。重点措置の効果に対し、自治体にも疑問の声が広がっていることを重く受け止める必要がある。
 感染症対策には個人では限界があり、公の果たす役割が大きい。政治が説得力を持って方向性を示さなければ、対策そのものの信頼性も低下してしまう。

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