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2022.03.20 08:00

【ウクライナ危機】中国は大国の責任果たせ

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 ウクライナに軍事侵攻したロシアに対する中国の対応が定まらない。
 習近平国家主席は緊張緩和へ「積極的な役割を果たす」意向を示しながら、国連総会では非難決議案の採択で棄権に回り、欧米や日本の経済制裁にも反対している。ちぐはぐさが拭えないが、注目された米バイデン大統領とのオンライン会談でもその姿勢に変化はなかった。
 中国は「蜜月」と言えるほどロシアと緊密な関係にある。だが国際秩序を揺るがす暴挙に毅然(きぜん)とした対応を取れないなら、安全保障理事会の常任理事国として責務を果たしているとは言いがたい。曖昧な態度は国際社会に強まる台湾有事への懸念を深めるだけだろう。
 欧米主導の国際秩序に不満を持つ両国は近年、連携を深めてきた。2月の首脳会談では中国が北大西洋条約機構(NATO)拡大に反対するロシアを支持し、ロシアは台湾独立への反対を表明した。
 ただ、プーチン大統領が全面的にウクライナ侵攻に踏み切ったことは計算違いだったのではないか。
 侵攻当初、ウクライナに滞在していた中国人の退避が遅れ、負傷者も出た。威信を懸けた冬季パラリンピック北京大会は戦時下での開催となり、「平和」や「共生」の意義が問われた。中国は面目をつぶされた格好だが、それでもロシアを擁護する姿勢を崩していない。
 習国家主席はウクライナ危機を巡り「各国の主権と領土の一体性は尊重されるべきだ」と国際社会への配慮もみせる。一方では「安全保障に関する各国の合理的な懸念も重視されるべきだ」とNATO拡大に反対するロシアの立場に同調。日本や欧米などが強める経済制裁に反対し、貿易関係を堅持する。
 ただ、中国をみる国際社会の目は厳しさを増している。中国の対応次第では経済制裁の効果が薄まりかねないからだ。
 国際決済ネットワーク「国際銀行間通信協会(SWIFT)」からのロシア遮断は、経済制裁の切り札といってよい。
 だが、中国が持つ独自の決済システム「CIPS」が活用できればロシア包囲網の「抜け穴」となる可能性がある。ロシアの外貨獲得はそれだけ、戦闘行為を長引かせることにつながろう。
 米主要メディアは、ロシアが中国に軍事、経済両面で支援を要請したと伝える。中国は「虚偽情報だ」と否定するが、対応次第でウクライナの未来は大きく異なってくる。
 中国も東シナ海や南シナ海で海洋進出の動きを強め、周辺国とのあつれきを抱える。特に「中国領土の一部」と主張する台湾有事が現実になれば、広く甚大な被害を及ぼしかねない。国際社会は、中国のロシアに対する対応を今後の情勢を占う意味でも注目していよう。
 中国がウクライナ和平に関われば大きな効果が期待でき、大国としての信頼感も高まるに違いない。かたや侵略国に肩入れするなら、ロシアと同様、孤立を招くことになる。

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