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2022.03.19 08:00

【米国の利上げ】景気減速への目配りも

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 新型コロナウイルス禍からの景気回復を優先し、金融緩和を続けてきた米国が3年3カ月ぶりの利上げへ動いた。米連邦準備制度理事会(FRB)は、金利を0・25%引き上げることを決めた。
 ゼロ金利という異例の措置は、2年で解除となる。金融政策は危機対応から、物価高騰を抑制する引き締めへと転換する。
 FRBはさらなる利上げを見込んでいる。インフレ対策は一方で消費や投資を抑制しかねず、景気を冷やす恐れがある。また新興国からの急激な資本流出などで世界経済が揺らぎかねない。日本への影響も注視する必要がある。
 米国はコロナ禍からの経済活動の再開に伴い、原材料の供給停滞や労働力の制約が起き、インフレが加速した。2月消費者物価指数は前年同月比8%に迫る上昇となった。ガソリンや食料品の高騰で生活が圧迫され、利上げの遅れも指摘される。
 FRBは、主要政策金利であるフェデラルファンド(FF)レートの誘導目標を引き上げる。今後の定期会合でも毎回利上げして、年内に2%ほど、来年には3%近くに上げると想定される。1回の利上げ幅を拡大することも考えられる。また保有資産は削減に着手する。
 ロシアのウクライナ侵攻で世界経済は不透明感が増している。原油や穀物の供給不安から物価上昇への圧力がさらに強まる恐れがある。
 ことし10~12月期の物価上昇率を前年同期比4・3%とする予測がある。昨年12月時点での予想の2・6%から大幅な引き上げとなった。実質国内総生産(GDP)は下方修正している。
 英国も経済活動再開を背景にインフレが加速したことを受け、3会合連続で利上げした。消費者物価指数が物価目標を大きく上回り、金融引き締めが必要との判断からだ。
 しかし、引き締めの効果が強く出すぎると企業活動や消費に影響する。景気が減速するリスクがあり、欧米では物価高と景気停滞が重なるスタグフレーションが取り沙汰されるようになった。FRBのパウエル議長は景気減速懸念を否定するが、両にらみの難しい金融運営を迫られる状況になっている。
 日本は欧米に比べて景気回復の動きが鈍い。新型コロナ感染が再拡大し、減少の勢いも緩やかだった。日銀は金利抑制への姿勢を明確にしている。長期金利の上昇は経済活動を停滞させる恐れがあるためだ。
 長期金利の抑え込みへ、2月には3年半ぶりに「指し値オペ」を実施した。大規模緩和を続ける姿勢を示したが、引き締めに動く欧米の動向は日本にも影響してくる。
 米国の利上げを受け、外国為替市場では6年余ぶりの円安水準となった。消費者物価は上昇する傾向にある。原油や穀物価格の上昇に円安が加わり、値上げによる消費の低迷が景気鈍化に結びつきかねない。日本もまた難しい局面にある。経済情勢を踏まえた措置をいかに有効に展開するかが試される。

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