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2022.03.16 08:00

小社会 ようがす

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 「ようがす」。江戸っ子すし職人のせりふだから「よござんす」と訳すべきだろう。作家、山口瞳さんの「行きつけの店」にある、頑固が鉢巻きをしたようなおやじの話だ。

 作家が貧乏暮らしだった半世紀以上も前、父が亡くなった。通夜の客にそれなりのもてなしをしたいが、心当たりがない。思いついたのが、銀座のすし屋でなじみの頑固おやじ。わけを話すと「ようがす」。二つ返事だったという。

 その通夜は後々語りぐさとなる。飯台を担いできたおやじは茶の間に陣取り、黙々とすしを握る。客間に大皿が運ばれるたび、見事さに座がどよめいた。1人で50個食べた客がいたとは本当だろうか。

 作家は青くなった。高級すし店が出張して延べ100人は食べたろう。一体いくらにつくのか。100万、いや200万か。また借金生活が始まるな。後日店を訪ね、借用書を書くつもりでおずおず支払いの件を切り出した。返事は「10万円です」。作家は言葉に詰まり、トイレに立って大泣きしたという。

 いい気なもんだ、通夜にすし職人を雇えるとは結構な身分だねと冷ややかに見る向きもあろう。しかし行きつけとはいえ、作家は専らゲソをつまみに、飯をのりで巻いた素巻き専門の安手な客だったと断っておく。

 困った人を見捨てておけるか。「ようがす」は頑固おやじのおとこ気であったろう。世知辛い世相にへきえきの向きに、ガリ代わりの口直しとして提供申し上げる。


3月16日のこよみ。
旧暦の2月14日に当たります。つちのえ たつ 二黒 先負。
日の出は6時16分、日の入りは18時14分。
月の出は16時09分、月の入りは5時17分、月齢は13.4です。
潮は大潮で、満潮は高知港標準で5時36分、潮位153センチと、17時01分、潮位155センチです。
干潮は11時19分、潮位61センチと、23時31分、潮位4センチです。

3月17日のこよみ。
旧暦の2月15日に当たります。つちのと み 三碧 仏滅。
日の出は6時14分、日の入りは18時15分。
月の出は17時12分、月の入りは5時50分、月齢は14.4です。
潮は大潮で、満潮は高知港標準で5時59分、潮位161センチと、17時38分、潮位166センチです。
干潮は11時47分、潮位48センチです。

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