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2022.03.14 08:00

【物価上昇】消費を冷やさぬ手だてを

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 原油などの原材料価格が高騰し、円安は輸入物価を押し上げている。企業間で取引される物品の値動きを示す2月国内企業物価指数は、前年同月比9・3%上昇した。
 上昇幅はこの40年ほどで最大となり、指数の水準もバブル景気に入る前ごろ以来の高さとなった。昨年10月以降は8%を超える高い伸びが続いている。
 仕入れ価格の上昇は企業体力を消耗させ、賃上げの動きをためらわせかねない。家計負担が増大すると消費は低迷する。厳しい局面となった。あらゆる方面からの下支えを充実させ、対応していきたい。
 新型コロナウイルス禍からの経済活動の再開に伴う原材料価格の高騰や、供給網の混乱が物価を押し上げた。さらにロシアのウクライナ侵攻を反映した上昇が3月以降に本格化するとみられている。
 小麦価格は、世界有数の穀倉地帯であるロシアとウクライナからの輸出停滞で需給が逼迫(ひっぱく)する懸念から、国際相場が急騰した。日本の調達先でもある米国やカナダが不作で相場を上昇させる中、侵攻はさらなる打撃となる。
 国が輸入した小麦を製粉会社に売り渡す価格は2割近く引き上げられる。今後も上昇が想定される。製粉会社は価格転嫁を検討し、メーカーはパンや麺類などのさらなる値上げが避けられそうにない。
 原油価格も、侵攻に対する日米欧などの経済制裁を背景に急騰している。政府は石油元売り会社に補助金を支払い、ガソリンなどの上昇抑制を図っている。しかし当初の5円は早々に限界となり、上限を25円に積み増したが、上昇が続けば想定価格に抑えきれなくなる恐れがある。
 家計の負担も増大している。消費者物価も、1月で5カ月連続前年同月を上回った。電気代や食料、ガソリン価格が値上がりした。携帯電話料金の値下げが全体の上昇を抑えている側面があり、その影響が薄れると上昇率は高まるとみられている。
 消費者物価の上昇幅は企業物価に比べると低く抑えられている。原材料費や物流費などのコスト上昇分をそのまま小売り価格に転嫁すると、消費者の購買意欲を弱らせて売り上げに影響しかねないと判断してきたためだ。
 こうした企業努力によりコストを吸収する対応も厳しくなってきたようだ。企業物価の上昇に応じた販売価格引き上げへの期待はメーカーなどに大きい。企業収益の改善が賃金の伸びにつながれば好循環も期待できる。しかし、デフレに慣れた消費者の生活防衛意識が強まれば景気を冷やす恐れがある。
 日本以上に物価高騰が進む欧米では、物価高と景気停滞が重なる「スタグフレーション」への警戒感が高まっている。米国の2月消費者物価は第2次石油危機後のインフレが長期化したころ以来、40年余ぶりの大幅上昇となった。新型コロナ禍から回復を目指す実体経済の減速は日本にも打撃となりかねない。警戒を怠れない。

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