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2022.03.07 08:00

【JAに改善命令】職員の自負育つ組織に

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 不祥事が相次ぐJA高知県(秦泉寺雅一組合長)に対し、県は農協法に基づく業務改善命令を出した。役職員の法令順守意識の確立などについて、再発防止策を文書で提出するよう求めた。
 一連の不祥事の原因には法令順守意識の不足、硬直化した人事管理などが挙げられるが、いずれも以前から指摘されてきた内容だ。改善が進まない現状は職員の士気低下を映し出していよう。抜本的な組織の立て直しが求められる。
 JA高知県は2019年1月、県内の12JAと中央会、県園芸連など系統5団体が統合して誕生した。ただ発足以降、常に異常事態にあるといってよい。
 20年10月に仁井田米の偽装表示が表面化。昨年8月には賞味期限切れの原料を使ったユズ加工品の生産、9月にも職員の着服が次々と発覚した。
 有識者による第三者委員会を設置して調査に着手したものの、報告書を取りまとめた直後のことし1月にも、ポン酢の誤表示が明らかになった。不祥事に歯止めがかからない状況は消費者への裏切りであるばかりでなく、生産者にも不利益をもたらしていると言わざるを得ない。
 第三者委がことし1月に公表した報告書では、組織の根深い問題点が浮き彫りになった。
 各地区や工場に残る法令違反の独自ルールや、食品関係の法令に対する基礎的な知識の不足などを一連の背景として指摘。再発防止への提言は12項目にも上り、組織運営全般にわたっている。企業統治そのものを一から見直す必要性を突き付けられたと言えよう。
 組織風土の改善には職員の意識付けが重要だが、職員の士気低下が気がかりだ。調査に伴うアンケートで「JA高知県の発展に貢献したい」と回答した職員は半数に満たなかったという。職場でのパワハラや「自爆営業」の強要をうかがわせる回答も多数に上ったようだ。
 秦泉寺組合長は公表時の記者会見で、「不祥事はほぼ旧JAからの事案。統合されて出てきた」と釈明した。だが、不祥事が統合前に始まっていたとはいえ、多くは利用者らの指摘で発覚し、組織の内部統制が働いたわけではない。
 職員の声をみても、統合後の組織運営に問題があったのは明らかだろう。再発防止策も骨子にとどまり、具体性に欠ける。幹部が当事者意識を持って現実を受け止めなければ、組織の体質改善は進まない。
 JAは、農家の生産や販売を支えるだけでなく、地域で金融などのさまざまなサービスを提供するインフラといってよい。それだけ公共的な責任を負っている。そうした自負を職員一人一人が持てる組織づくりが求められよう。
 農協法は、JAの役割を「その行う事業によつて、その組合員及び会員のために最大の奉仕をすることを目的とする」と定義する。ピンチを契機に、その原点に立ち戻る必要がある。

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