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2022.03.04 08:00

【国連非難決議】蛮行が招いた露の孤立

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 国連総会(193カ国)は緊急特別会合で、ロシアのウクライナ侵攻を非難し、無条件での即時撤退を求める決議案を採択した。141票に上る圧倒的多数の賛成は、ロシアの国際的な孤立を際立たせた。
 安全保障理事会決議のような法的拘束力はないが、国際社会の総意として武力侵攻という蛮行を許さない姿勢を示した意味は大きい。決議に従い、ロシアはウクライナから早急に軍を引くべきだ。
 ウクライナへの侵攻が始まって1週間が過ぎた。ロシアの国防相は軍事目標だけを狙っていると主張してきた。しかし、首都キエフを象徴するテレビ塔をはじめ、第2の都市ハリコフの住宅街などへの被害も確認されている。実際には民間人を巻き添えにした「無差別攻撃」の様相を呈している。
 ロシア軍は短期間での隣国制圧を想定していたようだが、当てが外れた格好だ。ウクライナ軍の強い抵抗などにより、侵攻の遅れが指摘される。そうしたいら立ちがあるのかもしれない。殺傷能力が極めて高いクラスター(集束)弾や燃料気化爆弾などを使用したとの情報もある。
 これまでの攻撃で、ウクライナでは子どもを含めた2千人以上の民間人が犠牲になっている。国連難民高等弁務官事務所によると、周辺国に脱出した避難民も100万人を超えたという。
 苦戦が伝えられてはいても、ロシア軍はウクライナ軍を戦力的に圧倒している。このまま侵攻が続けば、さらに被害は拡大してしまう。
 人道危機を前に、国際社会でウクライナへの連帯を示す声が広がるのは当然だろう。
 国連総会では、各国からウクライナの主権と領土の一体性を尊重するよう訴える声が相次いだ。ロシアはウクライナ当局が市民を「人間の盾」にしていると批判したが、そんな独り善がりの言い分が共感を得られるはずがない。
 ロシアによる侵攻や核部隊の警戒態勢引き上げを非難し、「最も強い言葉で遺憾の意」を示す決議を圧倒的多数で採択した。反対はロシアなど5カ国にとどまり、中国やインドなど35カ国が棄権した。
 米欧や日本などは、国際決済ネットワークからロシアの一部銀行を排除するなど経済制裁を強め、民間企業にもロシアでの事業を見直す動きが広がる。プーチン大統領は自国民にも痛みが伴うことを十分に認識して、国連総会の非難決議に耳を傾けなければならない。
 一方、ウクライナ侵攻は国連が長年抱える課題も浮き彫りにした。安保理の機能不全にほかならない。
 当事国のロシアが常任理事国として拒否権を持つため、緊急事態に対応できず、総会の特別会合を開かざるを得なかった。その間にもロシア軍が侵攻し、危機が深まったことは看過できない。
 国際社会の連帯をロシアに示した意義はもちろんあるが、国連も現実の危機に対処できるよう改革を急ぐ必要がある。

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