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2022.02.16 08:00

【融資違法仲介】裁判通じて全容解明を

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 日本政策金融公庫による新型コロナウイルス関連融資を違法に仲介したとして、貸金業法違反(無登録営業)の罪に問われた元公明党衆院議員、遠山清彦被告の初公判が東京地裁で開かれた。
 遠山被告は、公庫を所管する財務副大臣を務めた時期も違法仲介に関わったとされる。極めて悪質と言わざるを得まい。遠山被告は起訴内容を認めているが、裁判を通じて真相をつまびらかにする必要がある。
 起訴状などによると公庫は2020年3月、コロナ禍に伴い業績が悪化した企業を対象に融資を開始。遠山被告は21年6月ごろまで、事務所の業務として政策担当秘書らに指示し、111回にわたり公庫担当者を紹介するなど融資を仲介した。
 対象は支援者に限らず、融資希望者を広く受け付けていたという。融資額の一定割合を手数料として受け取り、総額で約1千万円の利益を得たとされる。
 悪質なのは、融資開始から20年9月までの間、財務副大臣を務めながら、仲介を繰り返していたとみられることだ。副大臣としての職務権限を行使していれば、収賄罪に問われる可能性もあったろう。東京地検特捜部は在任期間以外の仲介もあるため、賄賂ではなくビジネスの分配金と判断し適用を見送ったようだ。
 しかし、依頼者には手数料を払ってでも仲介を頼む動機があったのではないか。一部共謀したとして在宅起訴された会社役員は「副大臣だったため、対応が早くなると期待した」と話しているという。
 遠山被告は事件発覚前、緊急事態宣言中に東京・銀座のクラブを訪れたことなどから議員辞職した。国民の代表としての倫理観が緩んでいたに違いない。ただし、違法な融資仲介を個人の資質の問題と片付けることはできない。
 検察による冒頭陳述でも指摘されたが、公庫は融資の受け付けにあたり、国会議員らの紹介を受け付ける専用窓口を設けていた疑いがある。支店名や担当者名を伝え、通常の申し込みよりも短期間で融資を実施していたとみられる。
 仲介役が遠山被告だけなら、そうした対応を取る必要はあるまい。氷山の一角ではないかとの疑念を禁じ得ない。
 コロナ禍では飲食業や旅行業だけでなく、あらゆる業種が打撃を受けている。融資の開始時、公庫の窓口には希望者が殺到し、審査手続きの遅れが深刻になっていた。
 国会議員の仲介を特別扱いする実態があったとすれば、極めて不適切だ。遠山被告だけでなく、公庫の対応を含めた全容を明らかにしなければならない。
 政界の資金に関わる意識は、ますます有権者から乖離(かいり)しているのではないか。
 参院選広島選挙区の買収事件や、「桜を見る会」前日の夕食会を巡る問題でも説明責任が果たされていない。「文書通信交通滞在費」の運用改善も見通せない。もっと国民の厳しい目を自覚する必要がある。

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