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2022.02.12 08:40

問い掛けてくる「怖い絵」 香美市立美術館第3弾 絵金など56点

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絵金派の屏風絵「菅原伝授手習鑑 寺子屋」

絵金派の屏風絵「菅原伝授手習鑑 寺子屋」

 不気味、恐ろしい、心が不安になる――。見る人をそんな気持ちにさせる「怖い絵展」が高知県香美市土佐山田町の同市立美術館で開かれている。同館の収蔵品と美術文化協会高知支部・山本幸一所蔵の作品から宮本初義、谷岡久らの作品と、絵金・絵金派の屏風(びょうぶ)絵5点の計56点を展示。3月21日まで。

 同展は2017年、日の目を見る機会のない収蔵品を紹介する企画として開いたところ、来館機会の少ない若年層の興味をつかんだ。翌年の「もっと怖い絵展」も好評だったことから、第3弾として企画された。

 今回の特徴は絵金らの屏風絵5点をまとめて展示したこと。絵金は凄惨(せいさん)な描写で知られる。確かに生首や血しぶきが表現され怖さを感じるが、色彩は赤、緑、青など華やか。解説を手引きに作品を見ると、テーマが物語の世界ということで「死」が恐怖でなく「許し」や「救い」として表現されていることが分かり、怖さとともに新たな魅力が見つかる。

 一方、他の作家の作品からは現実と向き合う中で、重いものを突きつけられているように感じる。シュールレアリスムを貫いた宮本の「最後の街」は文明社会への警鐘。「不安な通り」は、浮かぶ球体から現れたのが異星人のようで未知への恐れを感じる。

小作青史「顔をつかむ男」

小作青史「顔をつかむ男」

 版画家、小作青史(おざくせいし)の「顔をつかむ男」は異常に大きく目を見開いた男。「鉄棒をする男」は山積みになった死体の上で体を揺さぶっている。小作の作品からは人間の抱える深い苦悩が伝わってくる。

 水間利生の「悲しみの世代」は米中枢同時テロ(2001年)の翌年の作品で、建物が崩れ噴煙が漂い、足元にはたくさんのネズミの死骸が描かれ、不安が漂う。円尾(まるお)博一の「藤戸の浦」は死や霊の世界をイメージさせる。

 山本の「帰郷2020」は新型コロナウイルス禍で行動が制限され、行き場のない不安が自画像とマスク姿の人々に込められている。吉川幸恵の「深層の番」は、暗闇の中で目を大きく見開いたネズミ。何を見ようとしているのだろうか。

 過去2回の企画を通して都築房子館長は「恐怖を感じる作品ばかりではありません。見ていると作品の方から問い掛けてくるようなものが多い。そこから自分の中の怖いものを見つけてほしい」。

 それぞれの作品は、見る人の気持ちを揺さぶり、そのうちに作者の思いが感じられてくる気がした。(池添正)

高知のニュース 香美市 美術・アート

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