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2022.02.10 11:53

【五輪コラム】屈辱のレースから16年 スノボクロス、5度目挑戦でついに「金」

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 女子スノーボードクロスで優勝した米国のリンジー・ジャコベリス=2022年2月9日、張家口(ロイター=共同)

 36歳になったリンジー・ジャコベリス(米国)がついに無念を晴らした。16年前、まさかの転倒でスノーボードクロス女子の金メダルを逃し、その後も運に見放されていたが、大ベテランになって立った北京の舞台で輝きを放った。


 ▽ゴール直前の悪夢


 雪上の格闘技ともいわれるスノーボードクロスが五輪に正式作用されたのが2006年のトリノ大会だった。4人が同時にコースに飛び出し、コブを飛んだりカーブをくぐり抜けたりしながらゴールを目指す。最初にフィニッシュした選手が勝者という分かりやすい競技だ。初代女王の最有力候補だったのが当時、伸び盛りの20歳、ジャコベリスだった。


 評判通りの滑りで勝ち上がった決勝レース。勢いよく飛び出して首位に立った。中盤までにカナダの2選手が転倒して残ったのはジャコベリスとターニャ・フリーデンだけ。このスイス選手との差も徐々に広がっていた。ゴールまでジャンプで乗り越える地点はあと二つ。一つ目のジャンプで空中に飛び出したジャコベリスは右手で板をつかむ「グラブ」を披露した。ところが、これでバランスを崩して左側にそれて転倒した。急いで立ち上がってレースを再開したものの、スピードが出ない。この間にフリーデンが横をすり抜けていった。


 採点競技のハーフパイプ(HP)ならグラブも必要だが、スピードを競うスノーボードクロスでは全く必要ない。優勝を確信してのパフォーマンスとも言われたが、レース直後の本人は「体勢を安定させようと思った」と話すにとどまった。


 ▽その後も届かず


 ジャコベリスはその後の五輪にも出場し、頂点を目指した。しかし10年バンクーバー大会は5位、14年ソチ大会は7位と振るわず、18年平昌大会も表彰台まであと一歩の4位で悲願の金メダルには届かずにいた。


 ただ、五輪での成績は振るわなくても「ハングリー精神は持ち続けていたし、年を重ねるごとに自分を許せるようになってきた」という。トリノ大会の悪夢も「あれは過去のこと」と思えるようになった。


 ▽「グラブ」はなし


 迎えた5度目の五輪。北京の舞台ではベテランらしさを遺憾なく発揮した。1回戦は緩斜面に細かいコブが続く序盤でスピードに乗れずに出遅れたが、無駄のないコース取りで徐々に順位を上げてトップに立ってゴールした。序盤の乗り切り方をインプットして臨んだ準々決勝、準決勝もその組のトップで通過した。


 決勝レースでは「トリノの悪夢」のことは全く頭になかったという。序盤からトップに立って、追いすがるクロエ・トレスプシュ(フランス)、メリータ・オディン(カナダ)を抑えて最後のジャンプに。空中に飛び出したが「グラブ」はしなかった。トップでゴールすると満足そうな笑みを浮かべ、自分を抱きしめるように胸の前で両腕を交差させた。まるで呪縛から解き放たれたことを示すかのようだった。


 「ついにやったね」と米国選手団から声が飛ぶ。ジャコベリスは「16年前と比べて選手のレベルは格段に上がっている。その中で勝てたことが何よりうれしい」と喜びを語ったあと「この日のために支えてくれたチームに感謝したい」と続けた。(共同通信・江波和徳)

(c)KYODONEWS

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