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2022.02.07 08:00

【「懲戒権」見直し】しつけ名目の虐待なくせ

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 法制審議会(法相の諮問機関)の親子法制部会が、親が子を「懲戒することができる」とした規定を削除する民法改正要綱案をまとめた。法制審は近く法相に答申し、政府は秋の臨時国会以降の改正案提出を目指す。
 「しつけ」名目の児童虐待を防ぐための見直しだ。削除した上で体罰禁止を明記し、子どもの心身に有害な影響を及ぼす言動も禁じる。
 親が子をたたいたり暴言を吐いたりする行為が明確に否定される意義は大きい。体罰や言葉の暴力は許さないという社会の意識を高め、虐待の抑止や早期発見につなげたい。
 懲戒権は明治時代から続く民法の規定だ。親権者は「監護および教育」に必要な範囲で子を懲戒することができるとしている。
 以前から、懲戒権を盾にして虐待行為を正当化する親らが問題になってきた。約10年前の法制審でも削除が検討されたが、「正当なしつけまでできなくなると誤解される」といった意見もあり見送られた。
 しかし、2018年に東京都目黒区、19年に千葉県野田市と「しつけ」名目のむごたらしい虐待死事件が相次ぎ、法改正を求める声が高まった。今回は法制審部会の全委員が賛成して懲戒権の削除を決めた。
 子どもへの体罰は既に児童虐待防止法で禁止されているが、個人の権利や義務など生活の根本的ルールを定める民法で禁じることになれば意味は重い。
 新たに親の義務として、子の「人格を尊重する」「年齢や発達程度に配慮する」との文言も盛り込まれる。親が教育やしつけをする際に大切にすべき理念が法的に裏付けられることになる。
 児童虐待に歯止めがかからない深刻な状況がある。20年度に全国の児童相談所が虐待として対応した件数は20万5千件を超えた。統計開始以来、30年連続で最多となった。
 親の虐待を生み、周囲も見逃してしまう一因に、日本社会が依然として体罰を許容している側面が挙げられる。厚生労働省が21年に公表した調査結果では、「場合により必要」として体罰を容認する人は約4割にも上った。
 体罰によるしつけを「自分も受けたから」と親が正当化し、子どもに繰り返す場合も多いという。しかし、もはや社会的に通用しない考え方だと認識する必要がある。
 もちろん親が子どもを叱ったり、しつけたりする必要はあるだろう。ただし、その方法として体罰や言葉の暴力を用いた「懲戒」は許されない。
 例えば、頬をたたく、長時間の正座や食事を与えないなどが挙げられる。それらの行為は医学的にも子どもの脳の発達にダメージを与えると指摘されている。
 一方で、しつけや教育に悩んでいる親も多い。子育ての責任を家庭だけで抱え込むのではなく、次代を担う子どもたちを社会全体で育てる。そうした意識を広く共有する機会にもしたい。

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