2022.02.04 18:05
ショート、長島改革で低迷打破へ スピード銀メダリスト異例の挑戦
首都体育館で練習を見守るショートトラックの長島圭一郎ヘッドコーチ=1月31日、北京(共同)
【北京共同】北京冬季五輪に向けた異例の挑戦がいよいよ本番を迎えた。スピードスケートで2010年バンクーバー冬季五輪男子500メートル銀メダルの長島圭一郎氏(39)は引退後、ショートトラックのヘッドコーチ(HC)に転身。託されたのは1998年長野五輪を最後にメダルから遠ざかる日本ショート界の改革だ。「本気でメダルを取れる組織になれるかどうか」を追い求めた。
違う畑から来て何が分かるんだ―。18年のHC就任後、周囲の冷たい視線を肌で感じた。1周400メートルでタイムを競うロングトラックと111・12メートルで着順を争うショートは似て非なる競技だが「今にあなたたちより詳しくなる」。低迷打破の決意を胸に秘めてきた。
インターネット上の百科事典「ウィキペディア」でルールや歴史を検索。無知を認めつつ、暇があれば自宅でも何十年前から最新の動画まで確認して研究した。今では外国勢や審判員の失格の傾向も頭に入れ「僕が一番ショートを見ている」という自負は誰もが認める。
指導法は大胆かつ繊細。ぬるま湯のような雰囲気を変えるためにスタート練習に交ざり、先頭に出て現役選手を圧倒し「こてんぱんにした」と闘争心をかき立てた。若手コーチとは酒を交え「(スピード出身の)俺が来た時点でやばい。このままじゃショートは終わる」と危機感をあおった。
助言を求める選手に全て答えないのは、自主的に考えさせなければ身につかないという自身の経験則に基づく。ふとした時に「期待されているうちに成績を出さないと、みんな一瞬で離れるよ」とストレートな言葉で心をくすぐり、ショートの慣習にとらわれず、スタートの細かな足の動作まで問題提起。昨年10月に会場の首都体育館で行われたワールドカップ男子1000メートルで4位と好成績を出したエース吉永一貴(トヨタ・中京大)が「発想が豊かで柔軟」とうなるほどだ。
1月31日に会場で初練習を終えると「やることがたくさんあって忙しい。選手の時は自分のことだけ考えていれば良かったが、気を使いながらやっている」と苦笑いを浮かべた。指導者として迎える初の五輪と過去の違いは「自分ではなく、他人の人生を懸けている差」。選手たちと一緒に4年間の集大成を懸ける。