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2022.01.27 08:00

【重点措置拡大】物足りない政治の主体性

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 新型コロナウイルスの急拡大を受け、政府はきょうから18道府県に「まん延防止等重点措置」を追加適用した。期間は2月20日まで。流行のピークが見通せない中、対象地域は34都道府県に広がった。
 岸田文雄首相は、菅政権の後手対応が批判された教訓から「最悪の事態を想定する」と繰り返し、「先手の対応」を掲げてきた。ただ、変異株オミクロン株の感染力の強さは想定を超えていたのではないか。ここに来て対応や情報発信に「遅れ」も見え始めている。
 オミクロン株の猛威には驚かざるを得ない。1日当たりの新規感染者はこれまでの流行のピークを大きく上回って7万人を超えた。
 重症化リスクは低いとされるものの、感染者の急増に伴って医療提供体制を圧迫しつつある。本県でも新規感染者が100人を超える日が増え、病床の占有率もじわりと上昇してきた。各地で医療や介護に加え、保育園や学校、公共交通機関、企業活動とさまざまな社会活動への影響が現実味を帯びる。
 重点措置の対象地域は、米軍基地から感染の「染み出し」が指摘された沖縄、山口、広島の3県から、短期間で全国へと拡大した。都道府県の要請に政府が応える形をとった。住民が危機感を再認識する重要な機会、メッセージになろう。
 ただ、具体的な対応となると柔軟さを欠いているのではないか。従来のデルタ株からオミクロン株へと置き換わり、ウイルスの特性は変わった。だが、基本的対処方針は従来通り、飲食店の営業時間短縮を対策の中心に据える。
 オミクロン株の特性に応じた対応に変えるべきではないか。適用地域を含め、都道府県にはそうした疑問の声が広がっている。本県での感染傾向をみても、飲食店より家庭内や職場、サークル活動といった経路が多い。実態と対策がずれてきている可能性がある。
 政府の情報発信でも、首相の存在感は薄い。政府分科会の尾身茂会長が「人流抑制より人数制限を」などと発言し、これまでの政府方針と矛盾すると批判された。発言は重症化リスクが低いオミクロン株の特性を踏まえ、感染対策と社会機能の両立を図る専門家の意見を代表していたようだ。
 本来、専門家は知見を政府に提供することが役割だろう。方針転換を含めて対策を決め、国民に説明する責任は政府にこそある。首相の姿勢には主体性が乏しく、専門家や地方任せの印象が拭えない。
 政府は「先手の対応」を強調してきたが、実態はどうだろう。前倒しを表明したワクチンの3回目接種は第6波に間に合わず、拡充した検査は早くも抗原検査キットの供給不足が表面化した。病床確保を強化する感染症法改正案などの提出も先送りしている。
 首相は慎重な対応を期しているのかもしれないが、オミクロン株の動きは極めて速い。迅速な対応へ首相のリーダーシップを求めたい。

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