2024年 05月05日(日)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

2022.01.26 08:00

【認知症対策】社会的支援を幅広く

SHARE

 超高齢化社会を迎え、認知症対策が大きな課題になっている。
 今月、米ワシントン大などのチームが将来推計を発表した。各国が認知症対策を取らなければ、世界の患者数は今後30年で1億5千万人を超え、現在の約3倍に増える。
 国内でも認知症患者は2025年には約700万人に達し、県内でも65歳以上の5人に1人が認知症になると推計されている。
 誰もが当事者や介護する立場になる可能性がある。患者と家族らが安心して生活できる社会の仕組みづくりを急ぎたい。
 認知症は、脳の病気によって記憶力や判断力が低下し、日常生活に支障が出る状態だ。半数以上を占めるアルツハイマー型や、脳梗塞などで起こる血管性認知症など原因となる病気は多い。
 予防が重視されるようになっている。アルツハイマー型では、運動をはじめとする生活習慣病対策が発症のリスクを減らすとされる。血管性認知症を防ぐには高血圧や糖尿病、肥満などの対策が有効という。
 脳の活性化を図ることも効果的とされる。高知市発祥の「いきいき百歳体操」のような取り組みの役割は大きいが、新型コロナウイルス禍で自粛と再開を繰り返している。社会との交流が減り、認知症の表れる高齢者が増えているとの指摘もあり懸念される。
 患者が増えるにつれ、生活状況に応じた幅広い支援策が必要になっている。その一つが、独居高齢者の認知症にどう手を差し伸べるかだ。高知医療センターの取り組みが注目される。
 救急外来を受診し入院せずに帰宅した患者のうち、認知機能が低下した独居高齢者も少なくないことに着目した。看護師が生活状況を聞き取る仕組みをつくり、必要に応じて地域の福祉窓口と連携して介護サービスなどにつなげている。
 認知症が困窮や社会的孤立と絡み合うと、援助を求めることにより消極的になるとされる。そうした支援の網からこぼれているケースにも対応しており、全国で参考にできる取り組みといえよう。
 患者を介護する側の負担軽減策も進めたい。認知症の症状に戸惑い、疲れやストレスをため込んで、うつ状態になることも多い。親類や周りの人が介護の状況を理解してくれないといった悩みも多いという。
 家族が認知症かもしれないと感じたら、市町村の福祉担当課や地域包括支援センターなどに相談できる。早期発見して治療を受け、介護サービスを適切に利用してほしい。
 認知症が虐待の引き金となるケースもある。県内で20年度に起きた家庭内の高齢者虐待のうち、ほとんどの被害者に認知症の症状があった。介護する側の負担軽減策は、虐待の抑止にもつながる。
 発症後も住み慣れた地域で暮らすためには地域の理解も欠かせない。多くの人が認知症に関する正しい知識を持ち、患者や家族を温かく見守ることが対策の基本になる。

高知のニュース 社説

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月