2022.01.25 08:38
ひきこもり経験者が当事者支える「ピアサポート」高知県内で広がり、相談数増「話しやすい相手でいたい」
ひきこもりの家族を抱える男性の悩みをじっと聞くピアサポ-ター(高知市大膳町の高知ひきこもりピアサポートセンター)
センターは2020年4月、県がひきこもりの家族会「やいろ鳥の会」に委託して開いた。県職員住宅を活用し、民家が並んだ公園沿いの一角にある。
昨年11月のある夜。1階の居間で、ピアサポーターと呼ばれる30代の男性相談員2人が、訪ねてきた市内の男性(67)と向き合っていた。
男性には30代の娘がいる。学生時に体調不良からひきこもりを経験。仕事に就いても続かず、外に出なくなったという。「『周りの子はちゃんと働きゆうに。娘は駄目な人間や』と決めつけてしもうちょった」
男性が申し訳なさそうに口を開く中、ひきこもり経験がある2人はじっと耳を傾け、優しい口調でこう語り掛けた。「『間違いだった』と言えることがすごいです」。男性の顔が少し和らいだように見えた。
男性は相談後、「娘と同年代のひきこもり経験がある人と話せて、いろんな生き方があるんやな、というのが分かった」「『親もずっと苦しかった』という思いを聞いてもらって、気持ちが軽くなった」と話した。
センターの21年度の相談件数は、昨年11月までで約700件。20年度の447件を上回る。サポーターは当初の9人から18人に増え、相談内容によって専門職と当事者宅を訪問することもある。
相談は予約不要で、時間制限も設けていない。「他では言えなかったことがここだと話せる」と、週に何度も訪れるひきこもりの当事者もいる。
サポーターで、ひきこもり経験がある楠永洋介さん(35)は「経験者だからといって皆を理解できるわけじゃない。生きづらさの背景は人それぞれ。この人にとって必要なものは何だろうって一緒に考えたい。苦しいときに来られる、ここはそれだけでいい」。
ほぼ毎日、センターで相談を待つ40代男性も経験者。「ひきこもりには息の長い支援が必要。抱え込む悩みから好きな映画の話まで話しやすい相手でいたい」と話している。
センターは月、水、木、金、土曜の午前9時~午後5時(祝日と年末年始を除く)に開いている。電話088・881・6301。(浜田悠伽)