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2022.01.14 08:00

【東証の市場再編】企業成長を促してこそ

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 東京証券取引所の市場再編に伴う新区分は、最上位のプライム市場に1841社が移行することになった。東証1部の84%に当たる。
 上場基準を厳格化して優良銘柄を集約し、海外から投資資金を呼び込む。再編にはそんな狙いがあったが、厳選の思惑は外れ、市場の姿はほとんど変わっていない。これでは東証1部というブランド力を捨てて取り組む再編の意気込みはしぼんでしまった印象を与えかねない。
 企業の成長を促し、市場活性化につなげる再編は課題を抱えたまま始まる。新しい看板に似合う市場にするために、さらなる努力を重ねていくしかない。
 従来の4市場は区分が分かりにくく、投資家へのアピールのしにくさに批判があった。このため4月に区分を再編し、プライムのほか中堅企業を含むスタンダード、新興企業向けのグロースに見直す。
 プライムは流通株式の時価総額が100億円以上、流通株式比率35%以上と最も厳しい基準を設けた。社外取締役の拡充など高いガバナンス(企業統治)が求められる。
 1部の銘柄数は東証の過半を占め、上場廃止基準が緩いことも問題視されてきた。基準を厳しくして国内外の機関投資家の投資対象とすることで、ニューヨーク証取などに株式売買代金で見劣りする状況から底上げを目指している。 
 しかし、8割超がプライムにとどまる結果となった。基準を満たしていない企業も適合に向けた計画書を提出すればプライムに移行できる経過措置を設けたことが影響している。最上位からの陥落を恐れた企業に配慮したためだ。
 東証は計画達成の期限を定めていない。企業側にかつての業績に戻そうとする意欲がある場合もある。だが、あまり先の設定では信頼性が乏しく、期限を区切る必要性を指摘する意見は根強い。
 東証では改善状況の開示を求めるとともに、計画と実際の進み具合に隔たりがある場合は、計画見直しの要請も行う意向を示す。厳格な姿勢が取れないようでは再編効果への期待は薄れてしまう。企業側も不透明な対応では説得力に欠けることを認識する必要がある。
 一方、1部からスタンダードを選択する事例が国内を地盤とする地方銀行や地方企業などに見られる。高知銀行は、流通株式の時価総額が基準を満たさないことが要因ではあるが、それとともに地域密着の方針と合致すると判断したと説明する。
 各社が経営の方向性はもとより、プライム入りで求められる情報開示対応や負担などを考慮して選択したようだ。プライムの基準に達しながらスタンダードを選択した企業があるように、自らの立ち位置を明確にする機会になった側面がある。
 高知県内の上場6社は、プライムに1部の四国銀行と技研製作所が移行し、高銀など4社はスタンダードに移る。それぞれ商品やサービスの独自性を伸ばし、県経済を押し上げることを期待したい。

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