2022.01.13 08:00
【オミクロン対策】柔軟対応にも綿密さを
だが、受験生の救済策は試験直前の決定となり、決断の遅さは否めない。かつてない急拡大に対処するには柔軟性が必要としても、急場しのぎでは新たな混乱を招きかねない。政策決定には一方で、綿密な準備と慎重な判断も求められる。
岸田内閣発足から11日で100日となった。岸田文雄首相にとって新型コロナの感染が急拡大する局面は初めてで、政権運営は早くも正念場を迎えた格好だ。
岸田首相は年頭記者会見で、水際対策の骨格を維持しつつ、高齢者らの3回目接種前倒しや無料検査の拡充、飲み薬確保など国内対策に軸足を移す方針を示していた。
ただ、オミクロン株の広がりは想定以上だったのだろう。米軍基地を抱える沖縄、山口の両県、隣県の広島県では感染が拡大してまん延防止等重点措置を適用。全国的にも前週比で数倍という勢いで新規感染者が増えている。
米国では感染者や濃厚接触者の急増により医療施設や交通機関などの人員が不足し、社会インフラに混乱が広がる。日本も決して対岸の火事ではあるまい。
政府の追加措置はこうした状況への危機感の表れだろう。岸田首相は5~11歳へのワクチン接種の開始、3回目の接種を一般分も前倒しする意向を示した。自衛隊が運営する大規模接種センターを2月以降、東京と大阪に再び設置するほか、自治体の大規模接種も後押しする。
接種の加速にはワクチンの確保が前提となろう。政府はモデルナ社と1800万回分の追加供給で合意しているが、実際にどれだけの前倒しにつなげられるか。感染拡大をにらみながら、実効性を高める工夫が欠かせない。
オミクロン株拡大は受験シーズンも直撃した。文部科学省は15、16日に迫る大学入学共通テストや追試験を受験できなかった場合、2次試験などの個別試験だけで合否判定するよう大学側に要請した。中学や高校の受験についても同様に柔軟な対応を求めるという。
受験生にとって感染症の流行は不可抗力と言ってよい。受験機会を確保する方向性自体は望ましい。とはいえ、試験直前になってのルール変更は学校側を戸惑わせよう。
文科省は昨年末、オミクロン株の濃厚接触者は一律に受験を認めない方針を示し、撤回した経緯もある。時間が限られる中で、受験の根幹に関わる公平性も担保しなければならない。対応が早ければ混乱を避けられたのではないか。
岸田政権の100日では度々、方針を転換する場面がみられた。状況に応じた対応は必要だが、朝令暮改となっては国民生活に混乱を来す。非常時にはなおさら、意思決定に明確な理念も求められる。