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2022.01.06 08:00

【再生へ 地方】活性化へ機運いま一度

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 昨年終盤は自民党の総裁選から衆院選、立憲民主党の代表選と政治イベントが続いた。いずれも地方政策の論戦は低調で、「地方創生」という言葉はあまり聞かれなかった。
 命や健康に直接関わる新型コロナウイルス感染症対策に世の耳目が集まり、埋没した面は否めない。
 安倍政権下で女性活躍、1億総活躍、働き方改革とスローガンが乱造され、めぼしい成果がないうちに政界の関心が薄れたのかもしれない。しかし、地方の疲弊は一層深まり、活力を失いつつある。地方の実情を発信し、いま一度、地方創生の機運を盛り上げたい。
 政府の地方活性化策はこれまで、統一地方選をにらんで浮上したケースが多い。安倍政権が地方創生を打ち上げた2014年も、翌年春に統一地方選を控えていた。それでも東京一極集中の是正や地域振興への期待は膨らんだ。
 ただ、今となっては肩透かしだった印象は拭えない。
 一極集中の要因の一つに、中央省庁に権限や財源が集中する中央集権がある。「隗(かい)より始めよ」の省庁移転は文化庁の京都移転にとどまり、企業の本社移転も大きな流れにならなかった。地方への権限や財源の移譲も進んでいない。
 政府の掛け声とは裏腹に、東京圏の吸引力は依然として強い。
 当初は20年までに東京圏への転入者と転出者を均衡させる目標だったが、コロナ禍で「地方回帰」が指摘された20年も、実際は東京圏への転入が約10万人上回った。一方で、本県の人口は70万人を割り込んだ。国勢調査をみれば、人口減少の速度はむしろ増している。
 地方創生の施策は、地方の知恵を中央が審査し、後押しするという仕組みだった。活性化へ地域の姿勢が問われるとしても、結局は中央に頼らざるを得ない「主従」の関係では限界があったろう。裏返せば、政府に「均衡ある発展」への確かな構想はうかがえない。
 岸田政権が新たに打ち出した「デジタル田園都市国家構想」はどうだろう。デジタル技術を使った新たなサービスなどを地方で普及させ、人口が減少しても便利で豊かな生活を維持するという。
 既視感は拭えないにしても、問題は政策をどう私たちの生活や地域づくりに取り込んでいくかだろう。実情をしっかりと情報発信し、地方活性化への機運を醸成する機会としなければならない。
 本県もこの2年、コロナ禍に翻弄(ほんろう)されてきた。力を入れてきた観光業のほか、街の活力を示してきた飲食業も大きなダメージを受けた。
 1期目の任期を折り返した浜田省司知事も前半はコロナ禍への対応に追われた格好だ。新たな変異株への警戒は怠れないが、「コロナ後」をにらんで県勢浮揚への戦略を具体化する時期を迎えたといってよい。
 本県は先んじて人口減少期に突入し「課題先進県」を自認してきた。地方活性化の議論をけん引する役割を期待したい。

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