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2021.12.31 08:00

【農産物輸出】さらなる拡大へ後押しを

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 農林水産物と食品の年間輸出額が2021年、初めて1兆円を突破した。世界的な新型コロナウイルス禍でも日本産品の高い品質が評価され、巣ごもり需要でインターネット販売が好調だという。
 政府が掲げてきた1兆円目標が達成されたことになる。さらなる拡大に向けて「農林水産物・食品輸出促進法」改正案を来年の通常国会に提出する見通しだ。後押しを強化し、地方経済の活力へつなげたい。
 日本の農林水産物や食品の輸出は1~10月で9700億円余りと昨年実績に迫り、11月の統計で1兆円を超えた。特に米国向けの牛肉や中国向けの日本酒などが昨年比で8割以上も伸びている。
 本県も増加傾向が続いている。20年は前年比11・1%増の16億2千万円を記録。主力のユズや水産物に加え、日本酒やリキュールなどが増えている。
 政府は06年に1兆円目標を打ち出し、25年に2兆円、30年に5兆円への拡大を目指す。岸田政権は昨年11月にとりまとめた農産物の「輸出拡大実行戦略」の改定を決定し、さらに後押しを図る構えだ。
 日本が強みを持つ産品を「重要品目」に指定し、集中的に支援するという。運転資金や施設整備を対象とした、事業者向けの制度資金を創設する。
 中小企業や生産者にとって、海外での販路開拓は、資金やノウハウなどの面が大きなハードルとなる。この対策として、政府は輸出関連事業者の支援拠点となる「輸出支援プラットフォーム」を23年度までに米国や中国、欧州連合(EU)など海外8カ国・地域に整備する。
 日本貿易振興機構(ジェトロ)や大使館と連携しながら、現地の法規制や商慣習といった需要開拓に必要な情報提供を行うという。かゆいところに手が届くよう、支援の充実を図ってほしい。
 国内の1次産業は、高齢化もあって年々従事者が減少している。県内も例外ではなく、農林業センサスでは昨年までの5年間で農林業の経営体は21・1%減少して1万3千余りになった。担い手の確保は待ったなしの状況だ。
 さまざまな地方自治体が移住の促進など対策を模索するが、特効薬はなかなか見つからない。地域や自然の魅力などはあるにせよ、やはり1次産業を担うことで生活が成り立つ環境づくりが欠かせない。人口減少期に入った国内市場が頭打ちとなる中、海外市場の開拓は重要なテーマとなろう。
 日本の輸出の主力である工業製品も海外市場では、激しい競争にさらされている。1次産品は単価が安い分、輸出額を伸ばすのに時間はかかるものの、文化と密接に関わる強みもある。
 和食がフランス料理や中華料理のように輸出国になじめば経済面のみならず、文化面への貢献も期待できよう。日本の食をはじめとするソフト力を一時のブームでなく、定着させる取り組みが求められる。

高知のニュース 社説

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