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2021.12.30 08:00

【2021回顧(下)】「傷み」修復する手だてを

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 2021年も新型コロナウイルスと向き合わざるを得なかった。
 感染拡大の「第5波」。8月半ばのピーク時には1日の新規感染者が2万5千人に達した。医療崩壊が起き、自宅療養者は3週連続で10万人を超えた。感染しても入院できずに亡くなる人が相次いだ。
 国内のワクチン接種は2月から始まり、夏は1日100万人のペースで進んだ。現在、2回目の接種率は8割近くに達している。
 対策は進んだが、長引くコロナ禍で社会に「傷み」が生じている。
 自殺者数は11年ぶりに増加に転じた。特に非正規労働の雇用悪化を背景にして、命を絶ってしまう女性が増えている。家庭や学校の環境変化が影響し、小中高校生の自殺も過去最悪になった。
 弱い立場にある人にしわ寄せが及んでいる。困窮や孤立などに手厚い支援を届けることで、社会の不安を和らげていく必要がある。
 一方、アスリートが活躍した年でもあった。きょうも打った、また投げた―。米大リーグ、エンゼルスの大谷翔平選手の「リアル二刀流」に元気づけられた人は多いだろう。
 ゴルフの松山英樹選手(明徳義塾高出身)は米マスターズ・トーナメントで日本男子初の優勝に輝いた。
 そして、東京五輪・パラリンピック。緊急事態宣言のさなか、大半の競技が無観客で開催された。日本勢は五輪、パラ共に数多くのメダルを獲得し、スポーツの価値を示す名場面も多く生んだ。
 ただ、膨んだ費用、運営体制を巡る多くの混乱、安全よりも大会の開催を優先するかのような国際オリンピック委員会(IOC)の姿勢には多くの人が首をかしげた。今年の新語・流行語大賞にIOCのバッハ会長をやゆした「ぼったくり男爵」が入ったことは象徴的である。
 閉塞(へいそく)感も漂う中、不安を呼ぶ出来事も後を絶たなかった。
 静岡県熱海市で起きた土石流災害は人災の要素が大きい。盛り土が崩れ27人が死亡・行方不明になった。再発防止へ総点検が欠かせない。
 他人を攻撃するネットの誹謗(ひぼう)中傷が深刻で、秋篠宮家の長女、小室眞子さんの結婚などでも表面化した。デジタル化社会で人権を守る方法の議論が急がれる。
 無差別に殺傷しようとする列車内の襲撃事件も相次いだ。そして今月、大惨事となった大阪のクリニック放火事件が起きた。孤立や経済的苦境など加害者に共通する部分もみられる。事件を防ぐ有効な手だてを考えなければならない。
 コロナの新たな変異株「オミクロン株」の拡大が懸念される。ただ、ウイルスの出現当初に比べ、私たちの対応力は格段に上がった。
 価値観も見つめ直された。当たり前ながら忘れがちだった命を守る大切さと、人間は一人では生きられないという事実を痛感した年だった。
 まずは互いに協力してオミクロン株に対応し、コロナ後、私たちが取り戻す日常がよりよい社会となるよう着実に進んでいきたい。

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